溺れないでよ【シルバー】 (ページ21)

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記憶と通知ページ21

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「なんの騒ぎだ」

皆がヒソヒソと声をひそめて隠し事をしているようで感じが悪い。大広間で目にしたのは王宮直属の騎士や役人たちだ。一体何が起きているのか。Aは全く想定していなかった。決して自分のことなどと。
皆で何かを企んでいるとか、何かやらかしてしまったというようなものではなかった。Aがシルバーの後ろで小さくなっていると、広間の真ん中から一人の男性がこちらへ歩み寄ってきた。
妖精族と比較しても珍しいくらい白い顔を鳴禽の仮面で隠し、うろんな漆黒のシルクハットを被っており、人相は窺えない。こんな如何わしい男、一度でも見たら忘れないであろうに、Aはどこかでいつか見たことがあるような、そんな気がした。男は翼のようにも見えるマントを翻して、Aとシルバーの前に立ち塞がった。

「はじめまして。私、ナイトレイブンカレッジから来ました」

男は”ディア･クロウリー”と名乗った。シルバーは小さく「ナイトレイブンカレッジ…」と呟いた。驚くのも仕方がない、何せナイトレイブンカレッジは有名な魔法士養成学校で、マレウス様と親父殿が現在通っているのだから。

『(ただシルバーに入学通知が来たって様子じゃないようね)』

「(ああ、マレウス様や親父殿の入学が決まった時もこんなに騒がしくはなかった)」

「あの〜、聞いてますか？」

シルバーと視線で会話していると割り込まれた。結構強かな男だ。上背もあるし暴れられたらひとたまりもないななんて考える。クロウリーはゴホンとわざとらしく咳を吐いて話を戻した。

「マレウス・ドラコニア直属護衛のシルバーだ」

『同じくAです。茨の谷へようこそお越しくださいました。ご用件はこちらで承ります』

「私が用があるのは茨の谷ではありませんよ。」

君です。とクロウリーは長い指を立てた。その方向にいるのはシルバーではなく、目を丸くしたAだった。シルバーは「やはり、あの話は本当だったのか……」と独りごちた。1人で理解して終わっているシルバーにイラッとしたAは、彼の手の皮をつねって小声で言った。

『どういうこと？ちゃんと説明して』

「今学園長が説明しようとしているだろ」

「ええ、今からしっかり説明しますよ」

＿＿＿＿この度君は闇の鏡に選ばれました。

そんな言葉とともに2人分の入学通知書を魔法でAとシルバーの手の上に落とした。Aはシルバーの顔とクロウリーの顔を交互に見て、驚きのあまりに脳が震撼した。