大きなひと口 ページ1
おふくろの味もいいけど私はきっと彼の思い出の味なんて作れない。
MK「ここ。」
マークの住んでいる寮は今は誰もいないらしくどこでも使っていいらしい。
風船の空気が抜けたような雰囲気のマークはなんだか珍しい。
アイドルとして写真撮影をするならばこのような儚げな姿はきっと絵になる。
だけど私はこんな彼は好きではない。
A「お邪魔します」
だから私が彼を笑顔にしたいんだ。
寮母さんがご飯を作ってくれるらしいんだけど、どうやらすっごく健康的な食事らしい。
主食、主菜、副菜、汁物、、、
こういうきちっとしたご飯は体にも良くて心にもいい。
だからこういうのを作ろうと思ってたけどこれで元気がないなら仕方ない。
私が疲れた時にやるあれしかない。
A「炭酸はいける人？」
MK「うん。すき」
決まりだね。
ピーンポーン、
やっときたか、
A「ありがとうございます」
宅配者「はーい」
この油の匂いだけで私はもう癒される。
ダンスに歌に見た目にトークに、
そのどれにもきっといい影響なんて及ぼさないんだろうけど私はこれが好きなんだもん。
A「よし、食べよっか」
MK「わ、」
サックサクのチキンと良くつけてあるキムチ、かき込む用のご飯にキンキンに冷えたコーラ。
MK「ひさしぶりだ、」
A「よし、いただきます」
MK「いただきます」
恐る恐る。
そんなに怯えなくてもいいのに、って言いたくなるようにチキンに手を伸ばしたマークはたぶん、こんなに体に悪い組み合わせは期待してなかったんだろうな。
サクッ、
MK「 おいしい 、」
ポロッと出たその一言に私はガッツポーズをとる。
A「ね。」
そんなに口に含ませならがら食べなくても逃げないのに、
そんなに急がなくても私は取らないのに、
あーあ、炭酸で喉やられてるよ、
忙しなく動くマークに思わず笑顔をこばしてしまった。
うん。良かった。
A「ご飯粒もチキンも色々ついてるよ」
MK「うほ、」
いっぱい口に含んでるからゴリラになってるよ、
取ってあげればぽっ、と赤くなる顔も今日はなんだか幼く見える。
A「おいしいね」
MK「うん。おいしい」
そうそう、その顔がいいよ。
目標の笑顔も見れたことだし、今日はなんだかいい日だな、
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作者名：おぱぷみ | 作成日時：2021年5月21日 15時
