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「...いいですね。完璧!!...でも無理しませんか?」
「..はい。」
「僕も一時期声が出しにくい時期があったので分かります。」
「..」
「とりあえず話しましょう。こっちにきてください。」
深刻そうなデフィさんと泣きそうなハユン。
デフィさんがこっちを向いて話し始めた。
「僕も練習生のとき、ストレスで声が無くなった経験があります。..一度声が出なくなると出るようになるまで、出てからも元のコンディションに戻すまでかなり期間がいります。」
「ハユンさんが大切な時期なのはわかりますが、このままいけばあの時の僕みたいに声が出なくなると思います。
いい声だし、この収録もこれでいきますが、ハユンさんの今後のために声が出なくなる前に変わった方がいいと思います。最後だけでも」
デフィさんは本気の顔で私たちに伝えてくださった。
ハユンの顔を見ると涙を堪えて下を向いている。
誰だって自分の特技が使えなくなることは怖い。今、ハユンはどんな気持ちなんだろう。
きっと私が考えたってわからないくらいの不安に押されている。
私はどんな声をかけたらいいのかわからなくて手を握ることしかできなかった。
「ありがとうございました!」
「..Aさん、ちょっといいですか」
「..はい?」
みんなが廊下へでていく。私も出ようとするとデフィさんに声をかけられた。
「..もし、ハユンさんと変わるならさくらさんだと思います。だけどさくらさんは、今ラップを乗り越えようとしている。...Aさん。あなたならきっとあの高音出せると思います。僕はAさんが出来ることわかります。..それだけ伝えたくて、頑張ってください」
デフィさんはそれだけを伝えて背を向けてどこかへ行ってしまった。
私にできるだろうか。
ある日、ふざけてみんなで高音出そうなんて言った日、
ハユン以外がちゃんと声が出なかった、あの高音を。
歌が苦手な私が。
私はもう一度デフィさんの言葉とハユンの顔反芻した。
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作者名:チーズケーキ | 作成日時:2024年2月19日 14時