これも日常【うらたぬき】

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タクシーに乗り込み約30分程。

漸く窓から流れる景色が既視感のあるものへと変わってゆき、やっと都内まで帰ってきたと感じさせた


｢そいや晩飯どうする？A何食べたい？｣

｢えーー、何って言われてもなあ｣

｢肉？肉食べる？焼肉？あ、しゃぶしゃぶ？｣


いやいや、お前の中でどれだけ私は肉に飢えてんだ。
涼しい顔で問うて来るうらたさんに文句と共に1発入れてやろうかとも思ったが、余りにも悪気のない表情だったので辞めておいた


｢じゃあ、肉で｣

｢んじゃこないだまーしぃに教えて貰ったトコにすっか！｣


満足そうに笑った彼は運転手さんに住所を伝えるとこれから向かうであろう店の説明を始めるのであった



＊



ありがとうございます、11040円です。

目的地に着いてメーターを止めた運転手が口を開き、私も半分出そうと自身の財布を取り出す前にうらたさんに颯爽と支払いを済まされてしまった


｢ちょ、私も出すよ｣

｢ばーか、こういうのは大人が出すもんなの｣


いやでもそれじゃあ私が納得しないんです。

うらたさんのコートのポケットにこっそり樋口さんを1枚忍ばせようとしたら気づいた彼に軽く手を叩かれる


｢えー、じゃあせめてご飯は自分の分出させてよ。なんなら私が奢る｣

｢だめでーーす、Aは俺に奢られとけ｣

｢暴論じゃん…｣


大人の財力という暴力に高校生の私は惨敗した

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