これも日常【うらたぬき】

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『ねぇ、まだ中なんだよね？楽屋の方来ていいからちょっと待っててくれない？』

｢なんで？｣

『Aのことチャージしたいし一緒に帰ろ』

｢えーでも私今日連番がい…｣

『いないよな、知ってる』

｢ぅ、｣

『帰ろ、今朝と同じとこで待ってろよ？』


よく使う手ではあるが、連番を理由にそのまま帰ろうとするも撃沈。

なんで連番いないの知ってるねん、見てたくらいでそんなのわかる？？

このまま帰ってもよかったが、後ほど怒涛の電話ラッシュが飛んでくると思うと鬱になりそうだったので私は大人しく今朝の楽屋まで踵を返した



＊



｢Aーーー！！！｣

｢ひゃ！！！びっくりした…。 こら、いい大人が飛びついてこないの！｣


空調設定の効いた暖かい部屋で1人ぼぅっとスマホを眺めていると、音もなくドアが開き、ライブ直後のうらたさんが飛び付いてくる


｢あっ、ごめん。今日俺まだシャワー浴びてねぇわ｣

｢嘘だ、全然臭くないよ？｣

｢ぜってぇ臭い！離れる！｣

｢？？？ いい匂いだよ？｣


うらたさん本人は汗臭いと気にしているのだろうが抱き着かれている私には全く持って汗臭さなど感じない
汗かいてもいい匂いって何事？？

回された腕をそっと離され、一歩後ろに下がったうらたさんは、未だ上気した頬をふわりと緩めて優しく私の髪を掻き混ぜた


｢…ちゃんと俺の事見てくれてて嬉しかった｣

｢あたりまえじゃん…｣

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