これも日常【うらたぬき】

＃１０ ページ1

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｢っ、あ…、あぁ…むり、、、｣

微かに開いた口からはそんな力無い声が漏れた

以前、というか開演前に私が『今日は見つけてくれるのだろうか』と言ったのを覚えているだろうか。

まあ、結果としては私の語彙力をここまで溶かすほどの天才極まりないファンサをかまされた、即ち、秒で見つけられてしまった

センター席の後方とはいえ、段がある列の最前だった私は演者が花道を通ってセンステに移動してきた時点で圧倒的破壊力に耐え切れず、なぜこの公演で連番を見つけなかったのか後悔した

泣きつきたいのに泣きつけない、兎に角うらたさんがかっこいい、え、今日顔面の治安良すぎません？



＊



真っ直ぐ花道を歩いて渡り、センステに到着する。

うらたさんがぐるりとセンステ周りを見渡して、すぐにかち合う視線。

一瞬だけど私には分かってしまった。

こいつ、めっっっちゃいい笑顔しやがった…

そこからはまあ、お察しの通りで何もせずとも段のおかげで視界良好なわけで。

ことある事に手を伸ばしてくるし、指先でちょいちょい煽りを入れてくるし、挙句の果てにはこっそりと固定を頂いた。


｢むりむりむり、かっこよすぎるって、え、？｣


柵に手を掛けて下を向き悶える

…この後ちらっと顔を上げた時にまた目が合う…というかはガン見されていてこれまた嬉しそうに目を細められるもんだから何故かこっちが恥ずかしくなった

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