・ ページ25
お風呂から戻ってきたら部屋にはうらたしかいなくて、他のみんなは疲れてお風呂に先に行ってしまったそうだ。
「なんでうらたは行かなかったの？」
💚「1人は寂しいんだろ」
「え？」
💚「風呂から戻ってきて、部屋が真っ暗だったらどうせお前寂しくなると思って。」
居て悪いかよ。と小さくつぶやきそっぽを向いてしまったうらた。
「…ふふ ありがとね」
💚「別に」
「……私、両親を亡くしてから、一瞬にして色んなものが離れてった。お姉ちゃんも、幸せだった環境も、あの時まで普通に存在してた日常も。多分、あの時から思うように魔力を使えなくなった気がするの。」
💚「お前はなくしたものが多すぎる。」
「……うん。」
💚「本当だったら当たり前にあるはずのものを、お前は経験せずにここまで来たんだ。成長過程でそんなことがあれば、思ったように魔力を使いこなせないのも当然だし、キャパがあんなにないのも納得出来る。……そのちっせぇからだでよく頑張ってきたな。」
そう言うと私の頭に手を置き、わしゃわしゃと雑に撫でた。
うらたは小柄なのに、手は大きくて包み込まれたようだった。
その手はすごくあったかくて、なんだか鼻がツンと痛んだ。
💚「お前が経験できなかったこと、本来ならあるはずのお前の欠けた嬉しいこととか幸せを、俺らと拾ってくんだよ。魔力を使いこなすなんて二の次でいい。お前はもっと自分に優しくなれ。自分を大切にしろ。…A」
ハッとした。
久しぶりに名前を呼ばれた。
久しぶりにこんな暖かく大切に名前を呼ばれた。
視界がぐにゃりと歪んで、堪えきれなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 84人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：むん | 作成日時：2023年5月29日 21時
