【歌い手】惚、好、愛、結 team.B【大型コラボ】 (ページ7)

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【あらき】いきあたりばったり/志賀つくだにページ7

人生ってのは、何が起こるかわからない。よーく聞くような、薄っぺらい言葉だ。だからこそ人生は面白い。これも巷でよーく聞く常套句だ。

その常套句に、教科書に載ってるような言葉の通りだと思ったのは、今から数年前。

***

「ピアス開けてもらっていいですか」

「はい？」

そんなことを赤の他人から頼まれるのは生まれて初めてのことだった。いやまぁそりゃ誰だってそうだとは思うんですけど。

いつも行く居酒屋で、一人で飲んでたあの日。隣の席に座っていた、「品行方正」「大和撫子」「立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花」みたいな言葉を寄せ集めてできました、みたいな顔した彼女＿Aは、そんなことを言ってきた。

もちろん初対面。ただお互いどぷどぷに酒が入っていたこともあり、なんとなく話してみたいなー、みたいな。ある種の好奇心に動かされ、話しかけて、んでそっからその頼みをされた訳だ。

本来ならまじすか、とか、え今すか、とか、俺でいいんすか、とか、いろいろツッコミどころはあったと思う。

ただいかんせん二人ともリットル単位で酒入ってんじゃねぇかくらい酔ってたもんで。

えぇ開けました。ピアッサーでばちこーん、と。

彼女の黒髪の裏にあった耳には、ロブを始めトラガスやらコンクやらスナッグやらがじゃらじゃらついてた。反対側の耳にはインダストリアルなんてごついのまで開いてたっていうから正直びびった。そんな「私日本人形どすえ〜」みたいな顔して耳ごっつ、って。

「今まではどうやって開けてらしたんですか？」

「彼氏に開けてもらってたんですけど、別れちゃって」

「んで俺に」

「はい、おにーさん見るからにそういう人だと思ったから」

まぁ確かに髪赤だしな。微笑んだ彼女の笑顔がとてつもないスピードで俺の心臓を働かせ出したのも、確かこの時。

その後なーんにもなかったかのように二人で酒飲んでて、閉店間際とかになるまで飲んでて。彼女の方が潰れちゃって全然起きなくて。こりゃやべーなーなんて思いながら、自分のマンションまで背負ってく訳ですよ。初対面なのにね。

んで、うわこれリスナーさんとかに見つかったらやべーじゃんって思いながらエレベーター乗って、自分の部屋着いて、Aをベッドに降ろして。そしたら急に疲れが出てきてしまって。俺もそう若くない、もう30手前のアルコール吸収しまくった身体は、部屋を出てすぐの廊下で力尽きた。