【歌い手】惚、好、愛、結 team.B【大型コラボ】 (ページ31)

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「……んで、」

「…ん？」

「なんで、わかったんですか」

＿＿＿私が貴方を殺す為に近づいていたこと

そう、震える声で言うと彼は少し笑った。
刀を向けられて笑う人が果たしてどこにいるのだろうか。

私の両手に握られた刀の先は、彼に当たる直前に止まった。
震える腕に伝染して、刀まで震えてしまっている。

「貴方になら殺されてもいいです。俺の最期の視界に映るのが貴方なら」

「……どうし、て、」

「理由なんて簡単ですよ。貴方を愛しているから」

「……っ、」

全身の震えが止まらなくなって、するりと刀を彼に向けるのをやめた。
ガンっと、手から刀が滑り落ちる。

落ちた刀を見て、センラさんはおやという表情をした。

「刀を俺に向けないんですか」

「………いつから、気づいてたんですか」

「俺の質問は無視ってことね」

笑いながら彼は振り向いた。
そうして、金に近い黄色の瞳を私に向ける。少し揺れて見えるのは気のせいだろうか。
戦いによって着物が切られても、髪が崩れても、彼の美しさは消えない。

すとん、と座り込んでしまう。

「町で、貴方に会った時です。2回目の時でしたかね。貴方はずっと手を握り締めていました」

「それだけ、で」

「その時はまだ予想に過ぎませんでしたよ。でも段々と確信に変わっていった」

( ごめんなさい、 )

私は、彼の言う通り彼の息の根を止めるためにこの国に送り込まれた、いわばスパイのような存在だ。
彼の前でわざと物を拾い、そしてあたかも彼に心惹かれたかのように彼を探して町に出てそして親しい間柄になった。

そして、彼の傍をキープするためにこの言葉を吐いた。

『私、センラさんが好き』

センラさんは私の言葉に驚いたように目を見開いたあと、嬉しそうに笑っていた。
私はその笑みにひどく罪悪感を感じていた。

私は心からセンラさんのことを愛していないのに。
彼の命を奪うためにこうして嘘まで吐いているのに。

彼は純粋な愛情を私に向けてくれる。
それが彼を騙している結果だということは自分でもよくわかっている。

けれど、彼が私を敵だと知っていたとしたら。
知っていたのにも関わらず、私に愛情を抱いてくれていたのか。

なんで、どうして。
全て、私がセンラさんに向ける言葉も表情も偽りだったのに。

「一回惚れてしまったらもう負け。罪な女やわ、ほんま」

困ったように笑いながら、センラさんはその手を私の頭に乗せた。