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｢まふー、見て！この絵！私達みたいやん！｣
嘘だ。夢であったことが現実でも起こっている。正夢と言うやつであろうか。
｢A、その絵にあんまり近付かないで、お願い｣
絵に引き込まれて行きそうな彼女の片手を無理矢理引っ張る。胸騒ぎがする。
絵の中には、ボクとAそっくりの容姿をした二人の男女が博物館の中を彷徨っているかのような絵である。
だが、Aはそんなボクの手を振り払って、絵に向かって手を伸ばしボクもそれに呼応するかのように______。
****
目が覚めると、そこは恐竜の骨格の足元であった。先程まで夢を見ていた気がする。ここに来るまでの長い夢。
｢A、起きて、起きて！｣
｢んぁ……？あ、まふ。何や寝とったんやな私…｣
｢ねぇ、A。今日の朝見た夢の話だけど……｣
そう話した所ではた、と呼吸が止まった気がした。
待って、違う。待って。
朝見た夢とは何だ。何だと言うのだ。
朝見た夢もまた、今見ていた夢の中の一部だ。
だけれど、この博物館に入るよりも前に。ボクは同じ事をしていたはずだ。
Aに、背中を押されてここを出た。
確かに、あれは現実だった筈なのに。
｢まふ？何してはるん？早くここから出なアカンやろ？｣
｢いや…でも、違う……｣
｢まふ！何言うてはるん！？しっかりしぃや！｣
｢うあっ、ご、ごめん……｣
それではAに背を押されてここを出た記憶は何だと言うのだ。あれも夢だったと言うのだろうか。
それが確かとするならば、ボクがこうして見ている光景も長い長い長い長い夢の一部だとでも言うのか。
｢A、最初の絵の所に行こう？｣
｢なんで〜？最初に戻っても…ってあ！最初入ってきた所から出る言うことか！頭ええなぁ｣
夢か現実か分からない世界で、ボクは何度もAに背を押されてこの絵から出ている。
だとするならば、ボクはこの後どんな選択をすればいいのだりう。
これは夢なのだろうか。現実なのだろうか。
グルグルと考えを巡らせる間に初めの絵の前に立つ。Aの背を押そうとしたその瞬間。
背中に大きな衝撃を感じ取り、振り返った時にはAが横たわる絵が。
｢あ、あ、ああああああああぁぁぁ！！｣
そうして、また。
目が覚める。
胡蝶之夢。
ボクにも、君にも。何がなにか分からない。
これぞ正に。
胡蝶之夢。
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