【まふまふ】胡蝶之夢/鎖座波 ページ5
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夢を見て、そして起きた時にどんな夢か分からない事がよくあるだろう。
例えば、嫌な夢を見た時。
誰かに惨殺な殺され方をした。起きたその時までは犯人の顔を覚えていたのに、その場に立って深呼吸をしてみれば忘れてしまう。
はたまた、大好きな有名人に会った。
何をされたかすらも覚えていなかったり、その人の表情すらも忘れてしまった。
最悪なのが、何かを見たが何かが全く分からない。そんな状態だ。
｢A？あ、おはよう…｣
寝ぼけ眼を擦りながら、隣で起きている彼女であるAに声を掛ける。彼女とは現在進行形で二年前から同居…のような同棲のような。まぁ、言わばそのような仲である。
｢おはようさん。ほんままふは朝起きるの遅いんやなぁ｣
ふにゃりと頬を緩め、タレ目がちな瞳が笑ったことによって更に下にと下がる。
柔らかな京都訛りが耳に心地好い。
｢にしても…A、生きてるね良かった…｣
｢えっ？何？私死んどったらここに居らへんやろ？｣
｢そうだけど…Aが変な場所に閉じ込められちゃう夢見たから｣
｢何なんそれ〜！ほらもう〜寝ぼけとらんと、朝ごはんの準備するで？｣
夢を見たのだ。
一つの絵があって。
その絵の中にはAと、ボクが入り込んでいて。
訳が分からなかった。
その絵の中では特に不自由は無かった。だが、友人や家族は勿論、人間が誰一人居なかったのだ。
夢の中のAとボクが入り込んだ絵が飾ってあった博物館に居て。その博物館の扉も窓も全て閉まっていた。
｢まふ〜！？何してるんー！？朝ご飯作る言うたやろー？早ういろはとぽてとに餌あげぇやー！？｣
｢あっ、ご、ごめーん！今行く！｣
先に部屋を出て行ったAの大きな声でハッと我に返る。
夢のことをモヤモヤと、同じことをグルグルと考えては渦巻いて。全く訳が分からない。
｢まふ、この絵の中から出るにはまふが先に出らんと出られへんねん！早う行って！｣
｢嘘でしょ。その癖。嘘吐くときに絶対服握る癖！本当のこと言ってよ！｣
｢……一人しか出られへんねん。だから、バイバイ｣
そう言って、Aはボクの背を押して。
気付いた時には絵の外で。
振り返ってAの名前を呼んだ時には、その絵がAが幸せそうに横たわって寝ている姿に変わっていた。
｢今日さ、博物館行かへん？｣
｢え、？｣
夢と全く、同じ言葉だ。
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