＊ ページ20
ページをめくるのが怖かった。
ここからは本当に未知の世界だ。そういえばこの日記をこんな箱に入れた覚えもない。
手が震える。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
10/5 もう書いてくれないのかな
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
10/6 いつか見てくれることを願ってます
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
10/7 ねぇ、坂田くん
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
一番下に書かれた10月7日の日記。
どうしてこう、ページの狭間に書くのか。
君らしいっちゃ君らしいけど。
怖い。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
10/8 ずっと好きでした。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
10/9 大好きでした。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
胸が苦しかった。
別に俺が彼女に対して特別な思いを持っていたかと聞かれるとわからないけど、それでも彼女の気持ちに気づけず日記を開くのが5年たった今だなんて。
謝りたかった。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
10/10 あの時、1人だった私に話しかけてくれて嬉しかった。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
10/11 この日記は私が責任もってアメリカへ連れていきます。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
……アメリカ？
たしか、この日はAが学校に来なくなった日。転校したという知らせは、朝のホームルームで担任から聞かされた。
だけどまさか、海外だなんて想定外だ。
もう会えないじゃないか。
日記を返すことも、返事をすることも、謝ることも。
苦い思い出だな〜と思いながら、じっと日記を読んでいたので汗も引いたため、エアコンの温度を1℃上げた。
だけど彼女がアメリカにこの日記を持っていったのなら、何故今俺はこうやって日記を手にしているのだろう？
引越しの準備なんてもう忘れて、再びページを捲りはじめた？この日記に俺の高校時代から今までの全てが載っている気がしてならなかった。
＿＿＿＿＿＿俺と彼女の空白の5年間が。
10月11日を最後に、ページは大きくとんでいた。
パラパラと親指の腹で進めていく。
書いた跡も消した形跡もシワも何も無かった。
日記は、12月3日から再開していた。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
12/3 いつになってもいいから、この日記を坂田くんにわたしてください。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
字が、歪んでいた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 19人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
