【うらたぬき】アンハッピーエンド/nana ページ8
貴方に恋をしてしまいました。
.。o○本作品は“リアコ”を取り扱っております。苦手な方は各自でご自衛ください。○o。.
漫画では定番だ。アイドルに、先生に、大人に、恋をする。禁忌の存在に手を伸ばす。
そして、その存在に見つけてもらうことも。その存在と結ばれることも。
また、定番である。
――――――その定番が現実ではニセモノだとわかるのに、私はどれくらいかかるのだろう。
「うあ......浦田さん............」
スマホを見て心の中で頭を抱える。もう好きという言葉なんて私の心を表さなくなってしまった。
呻き声を上げて、小さく彼の名前を呼ぶ。
それだけがきっと、全てだ。
「ついてこいよ、なんてそんなの、」
決まってるじゃん。
不意打ちで呟かれた言葉は飛矢のように心臓に刺さった。抜けないままに脈打ち続ける。
一目惚れ...ならぬ一聞惚れだった。
暇潰しにYouTubeを放流して、歌ってみたぬき、なんて少し寒いだじゃれを見つけてしまった。「さむっ」なんて声に出してしまったけど、それは再生ボタンを押させる役割を十分に果たしていた。
今ではそれも可愛いと思う材料の一つに加えられてしまった。
もうわかっている。
絶対に叶わない恋をしてしまった。
絶対に届かない想いを抱いてしまった。
切ない。苦しい。
きりきりと何かが胸の底から迫るほどに。
「......駄目だ、」
ぱちんと頬を叩く。
不意にこんな気分になることがある。諦めたはずなのに、割り切ったはずなのに、どうしても鬱々としてしまう。涙が零れてしまう。
降りたら楽になるかな。
何度も思った。この好きって気持ちごと、なくしてしまえたら。
自分がなくなってしまうだけだった。
浦田さんを好きだという想いはそれほど大きかったのだと思うと震えてしまった。彼がいなくなったら私はどうなってしまうんだろう、幼いままの心を抱え込み過ぎて肥大してしまった。
この気持ちの収め方を。
知らないままにオトナになってしまった。
明日はライブだ。
この気持ちに気がついてしまって。整理もできていないままで。
もう最後になるかもしれない、ライブだ。
笑顔で、いなきゃ。
机に向かい、洒落た便箋を取り出す。緑の葉っぱが彩られた、彼のために買った手紙。
深緑のボールペンで、文を連ねた。
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