＊ ページ17
.
｢志麻さん！｣
駅前で志麻さんの姿を見つけて駆け寄る。
初めて私服の志麻さんをみたけど、シンプルな服装でそれがより一層志麻さんの顔面の良さを際立たせていて、周りの女達が志麻さんに目を奪われるのも頷けた。
私に気付いた志麻さんはおはようございます、と微笑んだ。
｢では、行きましょうか｣
するりと私の手を取って歩き出した志麻さんに首を傾げると、志麻さんは はぐれてしまったらいけないですから、と照れくさそうに笑った。
周りに人なんて全然いないのに、可愛い。
そうですね、と返して手を握り返した。
｢あの、志麻さん｣
｢はい？｣
｢せっかくのお出かけですし、今日は砕けた話し方をして頂けませんか？｣
｢.........ああ、それもそうやんな｣
｢前から思っていましたけど、志麻さん関西の方ですか？ たまに方言が出てるの聞こえます｣
｢俺は高知出身やねん
.........Aさんは敬語外してくれへんの？｣
俺だけなんてずるいやん、と拗ねたように言う彼が可愛らしい。
私は敬語が癖なので、すみません、と笑った。
.........これ以上、余計な情を志麻さんに抱きたくない。
映画を見て、その辺をフラフラと歩き回って、夕食を食べて、至って普通のデート。
彼を手にかけるタイミングはいくらでもあったけど、どうしても無理だった。
早くしないと、今日が終わってしまう。
依頼の期限は今日なのだ。
｢Aさん、明日なんか予定あるん？｣
｢いえ、ありませんが.........どうかしましたか？｣
｢いや、あともう一箇所、付き合って欲しいところがあんねん。.........連れてってもええ？｣
真剣な瞳に見つめられて、思わずはい、と答えた。
連れてこられたのは、とある建物の屋上。
｢ここからの景色、めっちゃええねん、Aさんに見せたくて｣
｢わ、ほんとだ.........！ 綺麗ですね｣
やろ？と笑う志麻さん。きっとリサーチして下さっていたんだろうな。
二人で身を乗り出すようにして、キラキラと光り輝く夜の都会を見つめた。
上を見ると月が輝いていて、わずかだが星も見える。
.........沈黙が流れた。
ああ、今しかない。
志麻さんが何か言う前に、やらないと。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 36人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
