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どれくらいの涙を零しただろう。
どれくらいの声を放っただろう。
気がつけば終わっていた。家に帰って布団に埋もれたその瞬間に、場面が一つずつ思い浮かぶ。頭の中が埋め尽くされ、飽和しそうになる。
始まった瞬間から泣いてしまった。
眩しいスポットライトがカッと散ったその瞬間に、私が好きで好きでどうにもできない彼が現れたその瞬間に、周囲から上がった声の波で会場が揺れたその瞬間に、
うわぁ、いるんだ、て。
今、好きな人が、目の前にいるんだ、て。
目の前で、歌っているんだ、て。
そうなってしまったら、もう無理だった。
ずっと泣いていたかもしれない。わからない。
ただ、歌っている浦田さんも。踊っている浦田さんも。話している浦田さんも。
笑っている浦田さんも。
涙でブレて滲んで歪んだ世界の中で、それだけは確かに輝いていて。
浦田さんの歌声だけが、周囲の喧騒を突き抜けて耳にこびりついて。
離れない。
離れて、くれない。
「やっぱり、すきだ...........」
呟く以外に整理の付け方を知らない。
好きだ、という言葉は以外に、この気持ちの名前を知らない。
「って、キャス?!」
ぼんやりとTwitterを見て自撮りに悶えていると、【15分だけキャス!】の文字。
行きます!とリプをして、URLをクリックした。
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