推しの綱海の妹になったんだけどこれなんてご褒美？ (ページ6)

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6話ページ6

生後10ヶ月、月日が過ぎるのも早いもので、もう9月だ。

私は壁を伝って歩くことができるようになった。それと、前歯が生えてきた。離乳食も増えてきて、ちゃんとした(？)食事ができて嬉しい。美味しいと感じたことはないが。

にーには2歳になって1ヶ月が過ぎた。

この前、お父さんとお母さんが話しているのを聞いた。どうやら、この時期の子は、“魔の2歳児”とも呼ばれるらしい。イヤイヤ期のピークなんだそう。

その時はあまり実感が湧かなかったが、今ならわかる。にーには何でもイヤと言うようになった。

この服がイヤ、この絵本がイヤ、母乳から完全に離乳食になったが、それもイヤ。マジのイヤイヤ期なのだ。流石、第一反抗期と呼ばれるだけのことはある。

しかし、それでも私は可愛い部分があるのを知っている。

「にーにー、えほ」

絵本を読んでと言うと、

「や～だ！」

と言って、そっぽを向かれる。しかし……

「まんまー、えほー」

「どうしたの？あ、絵本を読んでほしいのね。わかった、いいわよー」

私が、今度はお母さんに頼むと、

「だめ！」

お母さんの手から、絵本を奪い取るのである。

「条介、お母さんはAに絵本を読んであげるから、それ返して？」

「やーだ！おれやる！」

「でも条介、前みたいにAにぶつけない？」

「やらない！おれやる！」

「うーん……」

「やだー！！おれやるの！！」

か、かぁいい……。にーにの泣き顔を見れるのは今の内なので、毎日しっかりと目に焼き付けています。

あれ、ていうか……喧嘩の原因作ってんの、私じゃね？

大変！今頃気づいちゃった。

「まんまー、にーに」

「あら、Aもお兄ちゃんに読んでほしいの？」

私がコクリと頷くと、お母さんは諦めたようで、台所に戻って洗い物をし始めた。ついでににーにも泣き止んだ。

私とにーには並んで座り、絵本を読み始めた。にーには、若干涙声だ。

「むかしむかし、あるところに、おじーさんとおばーさんがいました」

どうやら、『桃太郎』を読んでくれるらしい。所々支えながらも、最後まで読み切ってくれた。その時の達成感に満ちた顔ほど可愛いものはない。

それで、読み終わった後に舌足らずな言葉で必ず言うのだ。

「またよんでやるからな」

そして、頭を撫でてくれる。