突然の来客の段 ページ5
大分調子も良くなって、体も自由に動かせるようになった。
それでも本調子ではないようで、体を横にすると、襖がダンッと大きな音を立てて開いた。
伊作さんはびっくりして、薬を落としかけた。私も驚いて、体を起こして神崎くんと襖を見ると、そこには片目に傷のある狼がいた。
ボスだ。
「ボス!ここにいたんだ!」
私がそう言うと、ボスは「ヴァウ!」と鳴いて、突進してきた。腕を伸ばして受け止めると、勢いで倒れてしまった。
すると、今度は竹谷さんが慌てて入ってきた。
竹谷
「おいお前!勝手に抜け出すな!」
息を切らしていた。どうやら、ボスをここまで追いかけてきたようだった。
伊作さんと神崎くんは、怖がって部屋の隅で抱き合っていた。神崎くんに関しては、布団を抜けるのは駄目だと思う。
ていうか、君達めっちゃ仲良いやん。
竹谷
「すみません。ほら、行くぞ」
竹谷さんがそう言っても、ボスは全く動く気配がない。
神崎
「そそそそそれ、なんですか……?」
竹谷
「ああ、これは………。……っ!」
竹谷さんが神崎くんの方を向いて、固まってしまった。
神崎くんは怯えた目をしている。竹谷さんは、それを辛そうな顔で見ている。
なんとなく理由がわかった。
「神崎くん、この狼は神崎くんを忍術学園まで運んでくれたんだよ」
神崎
「え?僕のことを運んでくれたのはAさんじゃなかったんですか?」
「途中までね。でも私体力とか力がなくてさ。もう限界だって思ったときにこの狼……ボスが現れたんだ。だから、そこからはボスが君のことを運んだんだよ」
神崎くんは呆気にとられたような顔をしている。そりゃそうだ。狼に命を助けられたのだ。私は雑渡さんだけどね。でも、助かったのは違いない。
神崎くんは恐る恐るボスに近づき、頭を下げた。
神崎
「え、えっと……お世話になりました」
神崎くんは顔を上げ、ボスと見つめ合った。
数秒後、ボスは神崎くんの鼻先をぺろりと舐めた。
緊張の糸が切れたのか、どっと疲れがきた。ボスに限ってそんなことはないと思うけど、ちょっと神崎くんが食べられるかと思った。
竹谷
「あ、あのさ……左門…」
神崎
「……はい」
竹谷
「今まで悪かった。謝罪できなかったことも、その……殴ったりしたことも…」
竹谷さんの顔は先程の神崎くんのように、怯えているようだった。
169人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「忍たま」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぬう(プロフ) - 久しぶりに天女系の作品見た1番すんなり受け入れられた…初めてッッッ(汗)完結されていて少し悲しいですが面白かったです! (8月10日 7時) (レス) @page25 id: 1d36f8c737 (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - これで完結なんでしょうか……? とても面白かったです! 個人的にはこの先が気になるところ……綾部くんと鉢屋にめちゃめちゃヒヤヒヤしました。夢主ちゃん、頑張れ!! (2022年6月1日 22時) (レス) @page25 id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - ぜひ完結まで読みたいです。大変かと思いますが更新していただけると嬉しいです! (2022年3月13日 12時) (レス) id: 5c55cc0d78 (このIDを非表示/違反報告)
こあ - 面白いです頑張ってください (2020年3月14日 18時) (レス) id: bc36a2a3f7 (このIDを非表示/違反報告)
紗那(プロフ) - とても楽しみにしています!更新頑張って下さい!応援してます! (2019年11月6日 23時) (レス) id: a5ce07c098 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:葉兎野鳥 | 作成日時:2018年9月25日 15時