サディストの段 ページ21
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「なっ…ふ、不破さん……!?」
不破さんを見ると、こちらを嘲笑うように見下ろしていた。
「私さぁ……“不破さん”じゃないんだよね」
「は……」
不破さんではないと言う目の前の人物は、部屋に足を踏み入れ、後ろ手に襖を閉めた。
途端に中は薄暗くなり、心が不安に駆られる。
一歩後退ると、ひんやりと冷たい壁が私の背中を冷やした。
「ほら、覚えてない?不破雷蔵の隣にいた」
「は、鉢屋……三郎さん…」
「そうそう!」
わざとらしく出された明るい声が、更に不安を煽る。
一歩、また一歩と近づいてくる彼から逃げたいが、生憎出口は相手の背中側。何もできない素人の私が、忍者の横をすり抜けて逃げれるわけがない。
「どう?天女様。怖い?逃げたい?言ってみなよ。その口でさぁ。許してくださいって、逃してくださいってさ」
何言ってんだこの人は。サディストなのだろうか。ドSは少女漫画で十分である。
しかし、命が助かるならどんなことでも言ってみせよう。命大事に!
「ゆ、許してください。逃してください……」
どうだ!と彼の顔を見ると、さっきまでの笑顔は消え、完全に真顔になっていた。
こ、怖すぎ……。
そう思って俯くと、そうはさせないとばかりに顎をガッと掴まれ、強制的に目を合わせられた。
顎痛い。
「そうやって自分の命が惜しくなった途端に何でも言うこと聞き始めるんだな」
言えって言ったのそっちじゃん!
無表情でつらつらと言葉を並べる人間ほど怖いものはない。顎痛いし怖いしでジワッと涙が目に浮かぶ。
「へぇ、泣く?いいざまだ。お前らはあいつらが助けてと叫んでも止めなかったのにね。あいつらの方がお前らよりよっぽど痛い目に遭ってるんだよ」
多分あいつらってのは下級生の子達のことだと思うけど。それは前の人達のことであって、私のことではなくない?理不尽にも程がある。
ギリギリと自分の顎を掴んでいる手を掴み返して、相手を睨む。
「ちょっと待ってください。貴方が言っているのは前の天女のことですよね。私はあの子達に危害を加えた覚えはありません」
「なに?」
「嘘は言ってないですが」
「………」
何を考えているのか、彼は暫く黙り込んだ後、スッと顎から手を離した。どういうつもりなのか。彼はまたへらへらと笑っていた。
「そうでしたね。すみませんでした。それでは」
「……は?」
夢だったのかと思うが、ジンジンと痛む顎が現実だと物語る。
ていうか顎痛い。
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ぬう(プロフ) - 久しぶりに天女系の作品見た1番すんなり受け入れられた…初めてッッッ(汗)完結されていて少し悲しいですが面白かったです! (8月10日 7時) (レス) @page25 id: 1d36f8c737 (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - これで完結なんでしょうか……? とても面白かったです! 個人的にはこの先が気になるところ……綾部くんと鉢屋にめちゃめちゃヒヤヒヤしました。夢主ちゃん、頑張れ!! (2022年6月1日 22時) (レス) @page25 id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - ぜひ完結まで読みたいです。大変かと思いますが更新していただけると嬉しいです! (2022年3月13日 12時) (レス) id: 5c55cc0d78 (このIDを非表示/違反報告)
こあ - 面白いです頑張ってください (2020年3月14日 18時) (レス) id: bc36a2a3f7 (このIDを非表示/違反報告)
紗那(プロフ) - とても楽しみにしています!更新頑張って下さい!応援してます! (2019年11月6日 23時) (レス) id: a5ce07c098 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:葉兎野鳥 | 作成日時:2018年9月25日 15時