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味は苦いけど ページ3

「世の中不公平だよなぁ」



お姉さんは何とも思ってないような素振りだった。


一口、片手に持ったコーヒーを飲んだ。


そして、自分が座っている場所の隣を叩いて言った。


「座れよガキ。ちょっと私と話そう」

「うん……」


少しだけ間を空けて隣に座った。

まお姉さんが話し出すのを待った。



「ガキ、名前は?」

「緑谷…出久……」

「そうか、緑谷クンか。でも、さっき金髪のガキがお前のことデクっつってなかったか?」

「うん。僕の名前の漢字がそう読むからって……」


そう言って、手のひらに“出”と“久”の字を順番に書いてみせた。

「はーん、大したガキじゃねぇかよ」

「………」

「しょうがねぇって。無個性なんだから。個性持ちの奴らからしたら、そりゃデクだろ」


お姉さんにもデクと言われ、視界がぼやける。

バカ。さっきも泣いたじゃないか。泣いちゃ駄目だ。お姉さんを困らせちゃうだろ。


とうとう、僕の目から大粒の涙がこぼれ落ちた。そうなると、もう我慢できず、次から次に涙が溢れ出る。



「お前、泣いてんのか?」


見てわからないの?


「やっぱガキだな。ガキはすぐ泣く。めんどくせぇ生き物だ。だから嫌いなんだよ、ガキは」



そんなことを言うなんて、あんまりじゃないか。目の前のお姉さんに、怒りがこみ上げてきた。


「僕は!お姉さんみたいに無個性でも脳天気に過ごすなんてできないんだよ!!バカ!!」


やってしまった。

お姉さんを泣きながら見つめていると、突然笑いだした。


「そうこなくっちゃ!!その調子でさっきのガキにも言い返せば良かったのになあ!!

なんで年上の私にできて、同い年の奴にできないだんよ!」


唖然。

励まして…くれた、の?


そっか。ちょっぴり恥ずかしい。


「あ、励ましてくれたなんて思うなよ。ガキが嫌いなのは事実だ」


グッサア!!

その言葉が、幼い僕の心を刺した。


「でも、お前は好きだな。ちゃんと強いよ、弱くない」

「……え?」

「なぁ、無個性の奴は世界に2割しかいないんだぜ。そしてその無個性が、今こうして仲良くなってる。奇跡だな。緑谷クンのお陰だ」


強いって言われたのは初めてだった。それに、僕とお姉さんが出会ったのは僕のお陰とも言ってくれた。

ホントは優しいお姉さんなんだ。


「ほら、これ飲めよ」

「あ、ありがとう」


コーヒーを飲んだ。


「にっ、苦い…」

「あったりめぇだ!ガキにブラックは早ぇ!」

「酷いよ」


でも嬉しい。

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- こんにちは!この作品の不思議な雰囲気というか和むような感じが好きです。夢主がチートとかではなくてのめり込みやすいというか…とにかく面白かったです! (8月2日 18時) (レス) @page22 id: ed7980a554 (このIDを非表示/違反報告)
hiroakannna(プロフ) - お初です!あぁ…和むなぁ…。こういうの。このまま中学、高校とかも見てみたいです!これからも更新楽しみに待ってます!頑張って下さい! (2019年1月27日 18時) (レス) id: bc274ad562 (このIDを非表示/違反報告)
葉兎野鳥(プロフ) - ハニーさん» それは良かったです! (2018年12月25日 23時) (レス) id: fad212b8a4 (このIDを非表示/違反報告)
ハニー - アッこう云うおねショタッぽいの性癖に突き刺さるわ、ドストライクに刺さるわ( ˙-˙ ) (2018年12月15日 21時) (レス) id: f040ea1a18 (このIDを非表示/違反報告)
葉兎野鳥(プロフ) - 紅葉さん» 本当ですか?良かったです!ヒロアカってこういう和み系が少ない(作者的には)と感じるので、息抜きになればと思って作りました。まあ、元がアクションなので仕方ないですけどね。 (2018年10月27日 19時) (レス) id: fad212b8a4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:葉兎野鳥 | 作成日時:2018年7月3日 0時

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