ベンチに座って片手にコーヒー

テレビに映るヒーローグッズ ページ12

「ただいまぁ〜」

「お邪魔しまーす！」

「静かにしやがれクソガキ」


Aは緑谷に拳骨をお見舞いした。これでも彼女は手加減をしている方で、それでも幼い緑谷にとってはかなり痛いものだった。

緑谷が頭を抑えてまた殴ったと文句を言う。しかし、少し慣れてきたのか、Aがこういう人だとわかったのか、いつまでもグダグダ文句を垂れることはしなかった。


「あらA、お友達？」

「悪い、起こしたか？」

「ううん、大丈夫」


居間からは、Aとは違い、随分と優しそうな女性が出てきた。しかし、彼女はれっきとしたAの母親だ。

二人の雰囲気は全く違うが、目元や鼻の形はそっくりだった。


「母さん、これ緑谷クン。カステラくれたんだ」

「そうなの？悪いわねぇ。ありがとう、緑谷くん」

「えへへ。美味しいから絶対食べてね！」

「そうね、絶対食べるわ！」


いつも仕事で疲れ切った顔をしている母が、楽しそうな表情をしている。Aにとってはとても嬉しいことだった。

緑谷クンを連れて来てよかった。

Aは緑谷に感謝した。


「じゃあ母さんは寝てくるね」

「わかった。今日は一日中休み？」

「ええ！夜ご飯、一緒に食べれるわね」

「……うん」


いつも一人ぼっちの食事だが、今日は母がいる。Aの密かな楽しみだった。性格も口調もこんなだが、誰よりも母を思う子供なのだ。


台所の冷蔵庫にカステラが入るかどうか心配だったが、なんとか入ってホッとしていた間、緑谷はテレビをつけていた。


「人ん家のテレビ勝手につけるなっての」


そう言いつつ自分もテレビを見ると、ショッピングモールの映像が流れていた。オールマイトの服や子供用の食器が売っているのを宣伝しているのだ。

なるほど。そういえば緑谷クンはオールマイト好きだったな。

テレビ画面を羨ましそうに見つめる緑谷を見て、Aはそう思った。

暫く考えて、Aは緑谷に提案した。


「行くか？ショッピングモール」

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