また、お前に【A3!】

女子トーク　sideいづみ ページ34

「すみません、買い物付き合わせちゃって……」

「いえいえ、私も欲しいものがあったのでちょうどよかったです」


至さんと万里くんが白熱したゲーム合戦を繰り広げているとは露知らず、私とAさんは晩ごはんの買い物に来ていた。


「Aさんは、春組の最初の公演から見てくださっていたんですよね」

「はい。春組は千秋楽しか行けなかったんですけど、他の組は２，３回ずつくらい見させていただきました」


劇の感想を一つ一つ言ってくれるAさん。

監督として、ここまで応援してくれる人がいるというのはとてもうれしいことだ。


「あ、何かすみません。私一人でしゃべっちゃって……」

「謝らないでください。本当に嬉しいですから」


そして、ふと思ったことを聞く。


「Aさんって演劇経験者ですか？」


一瞬Aさんの顔が曇った気がしたが、すぐに笑顔に戻った。


「はい。中学と、大学で少し。高校では観る専でしたけど」

「そうだったんですね！ちなみに役者さんでした？」

「色々やりましたよ。役者もしましたし、照明や演出、舞台監督なんかも……」

「凄いですね……！」

「あはは……まあレベルは学生演劇なのでそこまで高いわけじゃないんですけどね」


少し照れ臭そうに笑うAさん。


「あの、もしよければなんですが暇なときに皆の演技を見てもらったりは……」

「勿論、私で良ければ是非」

「ありがとうございます！」


やっぱり、自分の好きな物を好きな人がいるのはとても嬉しい。


「じゃあ早速今日の夜からお願いしていいですか？」

「いいですよ。何処の組ですか？」

「春組のエチュード練と自主練組が少しいるかと思います」

「分かりました。……楽しみだな」


そう呟いたAさんの顔は、本当に嬉しそうだった。

エチュード練→←弟と男心

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す