十一粒 ページ13
「カアァァ、カアッ!!Aニ告グ。南東ニ鬼ガ出没シタトノ報告アリ!赴ケ、赴ケェ!」
「またか······」
「物珍シイ血気術ヲ使ウトノ噂アリ!心シテカカレェ!早ク行ケェノロマ!!カアァァ!!」
「焼いてやろうか?桔梗」
そう言えば、俺の鎹鴉である桔梗は空高く飛んでいく。誰に似てあんなに口が悪くなったんだか。
目的地に足を運び入れれば、すぐさま飛び込んでくる鬼の姿。
今夜も数が多い······。
「男か。若い女より質は劣るがまぁ、お前はまだ旨そうだなぁ?」
「食えるものなら、食えばいい」
それだけ言って鬼の頸を取ろうと間合いを縮める。
早く避けないと殺されると言うのに、何故こいつは不敵に笑っているんだ······?
まあいい、油断をしているならさせておけ。わざわざ気付かせる必要もない。
日輪刀の刃が鬼の首に当たる瞬間、一気に視線が低くなった。
足がよろけた訳ではない。気を抜いたつもりもない。
となれば、目の前の鬼が何かしたんだろう。
「っ!?」
驚きはしたが、視線が低くなっただけのようだ。すかさず刃を奥深くまで刺し、一気に薙ぐ。
すると意図も簡単に鬼の胴体と頸が斬れた。
が、鬼は頸だけの状態になっても意識はある。俺の腕に自分の牙を立てて噛み付いた。
深くまで食い込んでいるのがわかる。ブチッと不快な音が聞こえた。
「くっ、」
思わず一気に力強く振り払うと、鬼の頸は地面に打ち付けられたように弾んで、動かなくなった。
最後に見た鬼の顔は、さも愉快そうに笑っていた。
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大正コソコソ噂話
鎹鴉の「桔梗」と言う名前の由来は秋に出会って、その周りに桔梗の花があったから。
考えて変な名前を付けてしまうより、無難だと思った。
by東雲
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