ねぇ、増田先生？ (ページ28)

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花火大会の日。

白地に黄色のひまわりがたくさん咲いている浴衣を着て、鏡の前で最終確認。
何年か前に陽葵と選んだ、思い出の浴衣。
慶ちゃんも浴衣で行くって言ってたからどんなのか楽しみ。

少しすると、慶ちゃんがおまたせ〜！って手を振りながら
来てくれた。女子か。

「今日のA雰囲気違うね！めっちゃかわいい！」

そんなストレートに言われたことないから恥ずかしい。

「ふふ、ありがとう！慶ちゃんも似合ってるよ！」

暗い紺色に淡い青のストライプが入ったシンプルなデザインに濃い紫の帯。
でも逆にそれが慶ちゃんを引き立てる。
口に出せないけど、めちゃくちゃかっこいい。
普段のかわいい慶ちゃんとは全然違う。男の人。

下駄に慣れてなくて歩くのがどうしても遅くなっちゃう。
そんな私に気づいて、ゆっくりでいいよって慶ちゃんは歩幅を合わせてくれる。
あぁ、増田先生もこうしてくれたっけ。

……ってだめ私！
もう終わったことなんだから、考えない考えない！

「A、どこか行きたい屋台ある？食べ物でもゲームでも、Aが好きなことやりたい。」

「ん〜とね、焼きそば食べたい！とうもろこしも！」

「いいね！俺も食べたい！じゃあ花火始まっちゃうから、ちょっと急ごっか。」

慶ちゃんはすごくナチュラルに手を繋いだ。
はぐれないようにねって。
私はその手を握り返すことも、離すことも出来なかった。

色んな屋台が見えてきて、お祭りって感じの美味しいにおいがしてきた。
慶ちゃんは歩きづらそうな私を気遣って、一人で焼きそばを買いに行ってくれた。
近くのベンチに腰掛けて慶ちゃんを待つ。
やっぱり私も行けば良かったな。
一人でいてもつまらないし、カップルのイチャイチャ見てるだけだし。

それから少し経つと、慶ちゃんが戻ってきた。
でも、隣にはお友達さんかな？暗くてよく分からないけど、誰かと楽しそうに話しながらこっちに来る。
…あれ、ぐふふふって聞き覚えのある笑い声が聞こえた気が
するような。
まさか……ね。こんな偶然あるわけないし。
それでも心臓がうるさい。落ち着け！わたし！深呼吸して！
でもどんどん声は近づいてきて、顔が分かる距離になった。