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走り出した。


いや、走り出そうとした。


それを誰かが私の髪を掴み止める。



『!』



掴まれた髪を強引に引っ張られ、後ろの方へと投げ飛ばされる。



『いっ……』



投げ飛ばされた勢いで、地面に倒れてしまった。


誰かが私に覆い被さる。



その“誰か”の顔を見て一気に涙が溢れ出す。









なんで。




『おと……さん』




そこには、お父さんがいた。


でも、いつもみたいに優しいお父さんとは違う。


角のようなものが頭から生えた、まるで鬼のような……



「あぁ参った、本当に参った」



お父さんが口を開く。



「俺が鬼だとバレてしまった、折角のカモフラージュが台無しだ」



鬼……

お父さんが、鬼?

人を食らうと言われている、あの……



『う、そ……だ』



やっとだしたその言葉に、お父さんは笑いながら言う。


「嘘じゃないさ、お前も今見てるじゃないか。俺のこの姿を」

『だ、って、お父さんは……鬼を、抑えてたじゃない…!』



そうだ、お父さんは鬼を抑えて私に逃げろと言ってくれた。

これは何かの間違い、間違いに決まってる!



「“抑えてたのが”鬼だったんだよA」



思わず目を見開く。


ありえない、それじゃあ……



『それじゃあ、押されられてたのは…』

「あぁ、あいつ…あの野郎、俺が村ん奴を食べてる所を見てやがったみたいでなぁ?」

『え……』

「バレちまったって知ってなぁ、母さんとお前を食べてずらかろうと思ったのに……あいつ、俺の家に先回りしてやがった」



お父さんは言葉を続けた。



「だから仕方なかったんだ、仕方なかった。仕方なかったんだよ」



涙が、どんどん溢れてくる。



『だったらなんでっ…私に逃げてっていったのよ!』

「あぁ、あれはな」









「お前を一旦にがしたところで俺はな、あの野郎を殺してお前を捕まえるのなんて簡単だと思ったからだ」

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作者名:まの | 作成日時:2021年2月13日 13時

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