惑星エデンの破壊者 (ページ10)

今日:15 hit、昨日:7 hit、合計:8,102 hit

10 ページ10

テレビカメラだけ乱雑に地面に落ちている。テレビ局から遠隔で実況じみたレポーターの言葉が時々聞こえる。遠隔で操作して、カメラが動く範囲では捉えられる雷神のような激情の少女。
マイクが披露音声は途切れ途切れだった。時折映る彼女の顔が般若のように恐ろしかった。
悪魔だ。
突然街に現れた蝗の群れを圧倒する稲妻に、誰かがそう呟いた。
「そうだ、あの女、見たことがある」
「ああ、俺もだ」
「テレビで前見たよな、あの時も、宇宙人かなんかだって…」
「そうよ！あいつ、あいつがいるせいで！こんなことになってるんだわ！」
「くそー！あいつがあれをここに呼び込んだんだ！」

「…好き勝手言うよねぇ…」
聞こえてくる罵詈雑言、そのくせ誰も助けようとせず、誰も出てこない。勝手だ。出てこられても面倒だが。
槍を回し、遠心力を利用して蝗を塵にする。そのまま手を離すとブーメランのように槍が飛んでいった。
パチン！と指を鳴らすとそれに呼応するように槍に雷が落ちた。巻き込まれた蝗はどんどん灰になっていく。無尽蔵に見えた蝗も随分減った。あと少し、あと少し。
かくんと膝の力が抜けて転びそうになる。聞こえてくるのは自分を罵倒する声ばかりで、応援なんてしてくれない。
こんな奴らしかいない地球なんて、と思わないわけではない。大好きな人たち以外はどうなったって構わない。でも、その大好きな人の、大好きな人の、大好きな人がいるかもしれない。
ちらりとカメラを見る。じぃっとこちらを見ている。品定めするようなそのレンズが嫌いだ。
「やい人間ども！聞いてるかっ！」
瓦礫の下からタコの足に似た触手を、土で作る。蝗の群れに突っ込んで、ぐしゃりと握りつぶす。
「私は、本当ならお前たちなんかどうなってもいいんだ！本当なら、こんな小さな星、滅びたって気にしないんだ！でも！…でも、守るんだ」
覗き込む顔は、やはり歪で、救世主にはふさわしくないだろう。
「好き勝手言えばいい。私を呪うなら呪え。これは、私からお前たちに渡す愛なのだから」
瓦礫の下にあるカメラを拾い上げる。
「私の愛する人が愛する地球は、私だって愛してる。だからきっと守ってやる。終焉なんて起こさせない」
蝗が再生する。
カメラを握り潰してぶっ壊し、Aはにぃっといつものように不気味に笑う。

わざとらしいかな

これくらいなら大丈夫

疑ってほしい

もっとわかりやすい方が…

Aは首を左右に振った。
しっかりしろ、私。
稲妻でこさえた手斧で飛んできた蝗を弾いた。少しずつ齧られている気がする。