惑星エデンの破壊者 (ページ5)

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古く壊れた皮膚は戻っても、中身を成すプログラム…人間で言う脳みそは壊れたままらしい。
最初にドラゴンと豚を見間違えたことから、彼女はもう二度と固有名詞を口にしなくなった。人のことはまだ間違えない。それだけが希望に見えた。
ブルマのもとに遊びに行き、トランクスとブラの相手をする。パオズ山から見上げた星空から母星を思う。そんな日を3日ほど繰り返した。
体の半分は元に戻った。
彼女の命日まであと一週間を切った頃、いつものように少し厚着をしてカプセルコーポレーションに向かおうとした。チチの古着を少し手直しした中華服は、紺の良い生地を使っていて、赤い刺繍が美しい。悟天がお姫様みたいと褒めてくれた。
悟天が乗せてくれる筋斗雲に乗って、風とともに森の匂いを感じる、はずだった。突然匂いが消えた。
終わりが近くて恐ろしい。静かに感じる脳の死を、体だけは健康的なわざとらしい黒曜石。石になっていく。
悟天の髪を撫でた。彼は振り返ってニコッと笑った。そのうちこの笑顔も見えなくなるだろう。次に思い出したのは悟空の笑顔だった。

「お前、何か変だな」
寝てしまったブラを抱き抱えながら窓を見ていた彼女は少しずつ光が戻りつつある髪を揺らした。
「ベジータもそう思う？」
「…見えていないのか。それとも、分からないのか」
「…」
エデンが近づいている。全てを食べながらエデンが来る。
「おい」
「終わりがあるから素敵なんだと思う」
天国は良いところだ、誰もが帰ってこないのだから。地獄だって同じじゃないのか。私は見たことないけど。
「…ねぇ、ベジータ」
変わらない笑顔はいつもより大人びていて、いつもより悲しい。
「お願いが、あるんだけど」

ふぁ、とあくびをしたブルマの部屋を、見計らったようにノックした。彼女ははいと返事して扉を開ける。
鼻を満たすバターの香りと、甘いケチャップ。金色の髪と瞳が笑っている。
「ブルマさん、これ」
「あらあらあら、美味しそう！どうしたの？」
「ベジータと作ったの」
「ベジッ…マジ？」
どこか焦げ目がついていて、卵の殻も入っていて、オムライスは裂けているし、隙間から見えるケチャップライスの鶏肉はぶつ切りだ。
「私のわがまま聞いてくれたの。この間食べられなかったから」
「気にしてたの？だったらシェフに作らせたのに」
「作りたかった」
「へぇ…いいわね。温かいうちに食べちゃいましょ」

卵を割る感触も、味も、匂いも、火の熱さも。

全部全部透明になったけど。

この時間と、気持ちだけは本物だって、確かめたかったんだ。