惑星エデンの破壊者 (ページ37)

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星空の譜ページ37

思い出せない。
悟空が言っていた願いのことも、オムライスの味も。
ようやく半分くらい満たされた腹を撫でて、星空を眺めた。美しい夜だった。
パオズ山の、一際植物の若い凹みがある場所。その中心に座って星空をぼーっと見つめた。
風がザワザワと木を揺らし、羽虫がAの腕に集っていた。
「…ぶるまさん、ごくー、べじーた…」
Aは指を折りながら友達になった人の顔と声を浮かべた。
「とらんくす、ごてん、…ぶら、ぱん…ごはん…びーでる、ちち、みすたーさたん…ぴっころ、でんで…みすたーぽぽ…くりりん…じゅーはちごー、まーろん…かめせんにん…あ、あと、ヤムチャ」
あと、あと1人か、2人…友達のように思っていた人がいたと思うんだけど。
「白い肌の…冷たい人…それから…綺麗な金髪の、綺麗な子…」
名前も思い出せない。声もわからない。
ぼたり、と大きいパール大の涙が溢れた。別に悲しいわけではない、何も、大した理由は。
だって忘れるくらいなのだ、きっと大切じゃなかったのだ。悟空が言った願いも、オムライスも、2人の存在(こと)も。きっと、そうに、違いない。
そうじゃなきゃ嫌だ。
そうじゃなきゃ、嫌だ。

Aの背中を見て、ピッコロは何も言えず立ち尽くした。パオズ山に行きたいと言うから連れてきたのに泣かせてしまった。
女の泣き顔は見ない方がいいんだったか、いやブルマはところ構わず泣くか。
神だったころ記憶にあるのは、どうしたって悪は栄えないということだった。悪は残酷に正義に狩られる。狩られた悪は人知れず死ぬか、より滑稽に殺される。
「…A」
「ぐす、っ、ん」
顔を上げた彼女はやはり美しく、ブルマとDr.ヘドによって完璧に再現された顔は、今は鼻を赤くして目を擦って、どうしようもなく無力な少女だった。
「あー、その、あれだ」
「どれ」
「うー…お前が忘れてても、俺たちが覚えてることはある。それに、もう忘れてしまったことは仕方ないんじゃないか？これから忘れないようにすれば良い」
「…」
「…」
「…じゃ、ぴっころ、は」
「勿論だ！」
「！」
「お、俺たちみんなが、きっと、ずっと！お前の友達だ！だから忘れてしまったことは、俺たちも背負ってやる！」
「…えへへ、わたし、まだ何も、言ってないよぉ」
へにゃりと笑った彼女を見て、ホッとした。頭を撫でると、抱っこを求めてきて、仕方なく抱き上げてやった。
「ねぇ、ぴっころ」
「なんだ」
「おねがい、ふたつめ。いい？」
「しょうがない奴め」

「ピッコロに先越されたわ！」
「カカロットがいつまでも食ってるからだぞ！」
「うめぇんだもんいいじゃんか別に」
「よくないわよ！」「よくない！」