惑星エデンの破壊者 (ページ17)

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ここが、私たちのあの世かもしれない。そう思いながら踏んでいく地面は柔らかくもなく、ただ空気の塊を踏んでいるように凹凸に足を取られる。
風もない、音もない。呼吸もしない私たちの足跡は残らない。
もう死んでしまったのだろうか、お別れもろくに言えず、私は動かなくなってしまったのだろうか。
最後に感じたあの硬い掌を、抱きしめ返すこともできなかった。ブルマさんに…特別なこと、してあげたかった。
「インマヌエル」
「A」
「お前は、まだやり残したことがあるのかい」
「…ある。まだ、終わりきってない」
Aは久々に自分の両足を見た。本物のように感じるのは、全身が偽物だからだろう。
「お前にはエデンの全てが刻み込まれたコアがある。それをあの蝗たちが食べてしまえばこの世界はとうとう抗うすべなく飲み込まれる。破壊神も、全部、食べ尽くす」
ドミヌスは優しく微笑みながらAの頭を撫でた。
「ここにいれば良い。外のことなど忘れて、ここにいろ。今は私と2人だがお前が望むなら今度こそここにエデンを建てよう。大きな城に白いドレス、あのサイヤ人たちも呼んでやろう。思念体になった私たちに終わりはない」
「…」
「辛かったろう、体がどんどん壊れていくのは。恐ろしかったろう、いざ死を前にするのは。私はお前を幸せにしたい」
「…はーぁ」
Aはわざとらしくため息を吐いて、右腕を自切した。パキンと音を立ててだらしなくぶら下がるそれに、ドミヌスは眉ひとつ動かさなかった。
「お前の言う通りだよ。でもお前の言うことに従うのは癪だ」
べっと舌を出す。ばらばらに治っていた部分が壊れていく。バランスを保てなくなって地面に這いつくばった。眩い髪は灰色になって、瞳は黒い液体で満たされた。
地面に伏した彼女を、ドミヌスは悲しげに見つめている。ただ残った右腕だけを、まだ握ったままでいた。
「人間がどうして罪深いか、私ならわかるよ」
声にノイズが混ざる。
「人間は、神が作ったものをどんどん理解する。雷も大渦も、いずれ神を理解する素質がある。知恵の実を齧ったからではないよ。知恵の実は善悪の実、知識を使うための知そのもの」
どんどん声が枯れていく。
「彼らになら、この世界を託して良いと思った。…私は、己が間違ったなんて思わない…この…地球が…特別に好きだから」
どんどん形が崩れて泥になる。Aはもはや輪郭を失い霧になって、その場に漂った。
「…やはりお前は人になった」
ドミヌスの前から霧が消える。
「ならば苦しみ悶えるがいい、業火に焼かれてその身を恨め」

「行って、帰ってくるな。私のA」