惑星エデンの破壊者 (ページ11)

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テレビから聞こえてきた声はあまりにも凛々しくて、危なげで、ブルマは初めて会った時の彼女を思い出した。
目を閉じている時から美しく、目を開いてなお艶やかで、声を聞けば花園を思い出す。紡がれる言葉は穢れのない知性を帯びているのに何も知らないらしい。
太陽のような生糸は風にさらわれて、肌は黒く冷たく柔らかい。
この世の美しさを詰めてもここまで無垢であるだろうか。自分もそれなりに、いやかなり美しいつもりではあるが、ひと目見た時から張り合う気など起こらなかった。当たり前のように、手を差し出したかった。
「情けないです…」
デンデが絞り出すようにそう言った。ピッコロが彼の肩に手を添える。
「神である僕は、何もできていないのに！彼女は母星を裏切って地球を守るために…！あんなにボロボロになって…！」
下界を見下ろす神は何を聞き何を見ているのか、ピッコロが一番よくわかっている。
裏切り。その言葉は否定したい。しかしそれは事実だ。選んだとしても、彼女はそのために苦しんでいる。
見よ、あの白い灰がカビのように跋扈する美しい顔を、半壊した頭に弾け飛んだ右腕を。

「イッ…！？ったい！何すんの！」
Aは鼻にぶつかってきた蝗を握りつぶした。虫とはいえ重く強い。
蝗がぶつかってくる。その度に少しずつ、齧られる。
「人の鼻先食いちぎりやがって」
少しでもエデンが私を取り込もうとしているらしい。全く忌々しい。忌々しい。忌々しいったらありゃしない。
メメントモリ…精々あと2発。2発撃てば義足の左足は消えて、体は衝撃に耐えられない。蝗の数は、地球を喰らうには少なすぎるが西の都を壊滅させるくらいにはまだ多い。かなり減らしたが。
故郷で覚えた痛みがジリジリと皮膚を焼く。鼓舞するように左手で膝を叩いた。
「よし！くらえ！」
バチバチバチと一層激しい稲妻を纏って地面を蹴る。高く上がって蝗の群れに飛び込む。一斉にこちらを見る目が気持ち悪いが、恨みがましいのが嬉しい。
「メメントモリ！！」
手斧に向かって稲妻が落ちる。ぶち当たった蝗たちは白目剥いて黒く散っていく。自分の体にも電撃が走る。人間なら間違いなく消し炭になるような激しい雷だ。体が普通なら、頭がいつも通りなら、こんなの効かないんだけどなぁ。
自分すら死に向かうなんて、素敵じゃないか。
強がっちゃってまぁ。

しにたくな

地面に着地して、降ってくる塵が髪に積もる。
バランスを保たず膝をついた。左足を見ればやはり白い灰に覆われていた。
「…まいった」
見れば蝗が突進してくる。
あと1発で仕留められるかどうか。