惑星エデンの破壊者 (ページ2)

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エデンは膨れる。
無限に増殖する蝗の塊はエデンを食い潰した後自身を回る太陽と月、金星、火星、全てを食い潰す。呼応するようにAの背中から液が溢れたが、徐々に回復しつつあるナノマシンたちが不要な部位を捨て新しく生まれ変わる。
Aが知覚できる範囲ではエデンはすでにエデンとしての役割を失っている。愚鈍な動きで彗星すら飲み込む。賢者たちが蓄えた技術は一時的に消え失せた。
エデンがものを食らうたびにAの体は治っていく。エデンと一体の彼女の体に向けて、蝗の群れがこちらに向かっている。
目的は彼女を取り戻すため、そして地球を含む第7宇宙を食らうため。あれは蠢く命の塊だ、知恵を持たない烏合の衆よ。そう蛇が囁くような気がした。知恵の実である己を食らうまで止まらない。
ドミヌスを模した行動だ。あれはエデンの意思ではない。そう分かっていても、まだ父が生きているような気がしてしまって、Aは月を見上げた。
中庭の池に足を入れて、懐く魚たちを無視したまま縁に腰掛けており、その腿の上にはブルマの頭があった。泣き疲れて彼女の硬い頭を枕にしたまま眠ってしまった。そしてそのブルマを心配して寝落ちたトランクスと、Aとトランクスと3人で遊びたくて起きるのを待っていた悟天がいる。無論彼も意識が月にあってここにはない。
真っ暗な夜を地球から見るのは初めてだった。
情けない背中を隠すように、後ろにビルスが立っていた。
「どうだ、お前のせいでまた地球がピンチだ」
「そうだね」
「地球が無くなるのは困る。美味しいものが食べられなくなるし、とくにこの地球は面白いことが起きるからね」
「…そうだねぇ、だったら」
後ろを向けば、ビルスがこちらに掌を向けていた。親指を折って4本指をピンと伸ばして、精査するようにこちらを見下ろす。本物の神。
「壊しちゃおっか。私のこと」
「…」
「その後は、ドラゴンボールだっけ。それで、記憶を消してよ。みんなから私を消してさ、そうすれば痕跡も何もない」
水面に写る月は揺れていて形が朧げだった。
「エデンと私は一体だ。合理的だね」
「だったらなぜ地球に帰ってきた？君ならそのまま心中することだってできただろう？」
「怖いもん」
「何が」
「1人で死ぬの、怖いもん。それに、ちゃんとさよならも言えてない」
ブルマの頭を撫でて、トランクスと悟天が寒くないよう抱き寄せた。
「…いや、違う。親父と同じとこで死ぬなんて嫌だった！…のかな？」
下手くそな笑みは相変わらずだ。
ビルスは手を下ろして「分かってから言え」と言って背を向けた。