検索窓
今日:9 hit、昨日:7 hit、合計:8,096 hit

1 ページ1

「…えっと…」
「…」
「…」
カプセルコーポレーションの中庭にウィスを筆頭に降り立った。南の島から既に帰っていたブルマたちが、特にブルマが、不安な顔で待っていた。
とびぬけた身長についている顔はやはり美しいが、右側が大きく欠けていて左目と鼻と口が残っているだけだった。それだけでも歪なバランスは美しい。ブルマと目が合うと、彼女は気まずそうに眼を逸らした。逃げるように、縋るように悟空を見ると彼も苦笑いをし、ベジータを見ると、彼女の夫らしく怒られて来いと目で訴えられた。
3人から少し離れて、ブルマに全身を見せる。
背中には矢が刺さっており、大きく背中が削げている。外側だけ冷えたエネルギー液が見えており、金色に輝く液体が樹液のように光っていた。僅かな輝きを発する髪は、かつての美しい色を持っていない。
右腕はなく、左足首は消え、右頭部は欠けている。
ブルマの顔色がみるみる青くない、そのうち白くなった。その顔を見て、Aはますます顔を逸らして、恥ずかしそうに体を摩った。
「あの…」
「…あんた」
「はい」
「…」
「…」
「…んっと、あのね」
「黙って」
「はい」
ブルマがつかつか大股で歩いてきて、左手を掴んだ。埋められていないヒビを見つけて、眉間に皺を寄せた。背中の粘液をぶにっと押す。体温の高い子供のようだった。脆くなった肌の欠片が落ちた。
ブルマは欠片を拾い上げた。素手で触って、彼女の指先から血が出た。
「あっ、私がやる」
「動かない」
「はい」
「…」
まじまじと彼女の体を観察する。彼女が見やすいように動こうものなら動くなと言われる。困った顔で見つめた先にはベジータが居て、彼は言う通りにしておけと眉毛を動かさず、目で訴えた。
「こんなに、なって…」
黒曜石と同じく貝殻状の割れ目をブルマがなぞる。
「い、痛くない。それに、平気だよ。えっと、336時間…ええっと、2週間?あれば治るから。ちゃんと。本当だよ」
「…」
「それに、それに…あの…お父さんはもういないし」
「…」
「…あっ、あと!あとね、悟空無事だよ!ベジータも!何も食べてないし、綺麗なまま…」
「あいつらはいいわよ!」
ブルマが叫んだ。見れば涙を目に一杯ためていた。Aは押し黙って、項垂れた。
「あいつらは…サイヤ人は、死にかけても仙豆があればもっと強くなれるけど、あんたは…!仙豆も効かないし…!」
ブルマの涙は心臓に悪い。
心臓など持たない、形骸化した知恵の実は自らの罪を悟った。
無知とは罪なのだ。
彼女は自分の価値を未だ知らないままだ。

2→



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (14 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
33人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ニック(プロフ) - とても良い作品でした。最終回なのが悲しいです。 (2023年4月25日 17時) (レス) id: 929d0bcae2 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:メルト | 作成日時:2022年8月3日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。