検索窓
今日:48 hit、昨日:25 hit、合計:15,347 hit

47 ページ48

蝗はベジータの肩にとまっていた。
慌てて彼が叩き潰し、事なきを得た。しかしその後、もう一匹、更にもう一匹と、大きめの白い蝗が現れた。悟空たちは叩き落とし、あるいは気づかれずに齧られた。
「いってぇ!」
悟空が大袈裟に飛び上がって首元を押さえた。
ジワリと滲む赤い血と、首元にある確かな熱。
「くそ、今度は何だ!」
「蝗だよ」
Aはじっと父親を突き刺したままの十字架の残骸を見つめた。そこにはもう父と呼べるものはなかった。奇怪な音を立てて、笑い声にも似た震えを纏い、彼はざわざわと肌を波立たせる。その肌は黒い蝗を作った。蝗で構成された父の体は、やがて槍をすり抜けた。
耳障りな羽音が、まるでノイズのように耳に響く。
「あの蝗は命を食らっていく」
飛んでいた鳥を蝗の塊は取り込んだ。地面で遊ぶ兎も、魚も、ネズミも、蝗はエデンにある命を食べ尽くしていく。それと同時にごぼ、ごぼ、と彼女の背中からエネルギー液が溢れ始めた。エデンに染みていく。
「おい、あれって、結構やべえんじゃ…」
「うん…どうしようね…」
「どうしようって、何なんだよ!ありゃ!」
「…私はこの星の核で、私の体が壊れたせいでこれが溢れ出してる」
そう言って彼女は背中から少しだけ粘液をとった。それを弓矢に変えて、蝗の大群に投じた。
蝗の頭上から突如雷が降ってきて、蝗の大半は焼け、炭になったが、同時に彼女の体も電気ショックを浴びたように跳ねて、地面に伏した。また黒い液体を吐き出して、彼女は地面に手をついた。悟空が駆け寄り、ベジータは顔が引きつっていた。
「は、ははは、最悪。これがエデンの末路だよ」

全てを食らいつくすまで満たされない。満たされるための器は壊れている。

「私をぶっ壊すのが先か、エデンがすべての宇宙を養分に変えるのが先か」
地面に染みなかったはずの液体がシミになっていく。それが意味するのは、この、惑星エデンそのものが、一つの貪食な猛獣になったということだ。
上空には知性を失った目でドミヌスが見下ろしていた。良かった、魂は死ねたみたいだ。
「ど、どういう…こと、なんだぁ?」
「この馬鹿!つまり、Aはもともとエデンのエネルギータンクで、その体が割れたせいでエネルギーが足りなくなって、ドミヌスのクソッタレが腹空かしてるってことだろうが!!」
「そーいうこと。早くかえろ。ここに居たら二人とも栄養になるよ」
「でぇええ!?早く言ってくれよ!」
かえろ。
その言葉に2人は違和感も持たなかった。

48→←46



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (15 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
29人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

メルト(プロフ) - どでぃさん» ありがとうございます!本当はスパヒ始まる頃に終わらせておくつもりでした!無理でした! (2022年7月28日 22時) (レス) id: 465e22fbd6 (このIDを非表示/違反報告)
どでぃ - 面白いです!すっごい続き気になってます、更新頑張ってください。 (2022年7月28日 11時) (レス) @page49 id: 8e1c6e0d2a (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:メルト | 作成日時:2022年5月3日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。