45 ページ46
突き刺さった槍の柄は赤黒い。どこで見たかと考えれば、それは、確か蛇の首を跳ね飛ばした時に見た色。
ザラザラと音が耳の裏に響く。砂嵐に似た雑音が徐々に大きくなる。
「あ」
ザラザラ、ザラザラザラ。ドミヌスは徐々に違和感を覚え始めた。
彼の表情が歪み始めたのを見届けて、Aは目を細めて左腕を柄から放し、ドミヌスを蹴り飛ばした。彼は崩壊した十字架の残骸に突き刺さった。
「あ、ああ、あああ…」
何がおかしい、何かが足りなくなっていく。脆い盃すら削られていくような。
暴れたくて、でも深く突き刺さった槍がどうしようもなくて、ドミヌスは咆哮を上げた。
それを合図にAに向けて天使たちが大量の矢を放つ。走って避けて、黄金色の弓矢を作った。
「避けて！！！！」
ベジータと悟空ははっとして遠く離れる。龍のような太く長い光の筋が天使たちをごっそり消し去る。残された閃光に触れた天使たちもバグを起こして煙を上げながら落ちていった。
「カカロット！あのクソ親父をやるぞ！」
「おう！」
それぞれ得意な構えをとって、ベジータと悟空は気をためる。Aはそれを止めず、残りの天使たちに矢を向ける。
バキン！
Aの体ががくっと崩れる。見れば左足首が飛んでいた。地面に落ちている、体が半分なくなった天使がこちらを見ていて、苗木の枝を利用して弓を引いたらしい。その後すぐに崩壊していった。
攻撃が来ると思っていた悟空たちは彼女を目で追って、名前を読んだ。
戦況は刻々と変わるものだ。
天使は掃いて捨てるほどにいる。新たな天使たちが神殿の外壁から粘度のように錬成される。顔の向きを戻せば、予想以上の数の天使が弓を構えてそこにいた。
逃げようにも間に合わない。それくらい間近で引かれた矢は真っ直ぐ、2人の心臓や目を、腹を、狙っていた。
放たれた矢は、末端の部位を掠めるだけで、2人の命を奪うことはなかった。
それが何を意味しているかなんて、目を開けずとも、互いの激しい鼓動だけでわかるというもの。
空にいたはずが地面にいて、太陽があるはずが夜のようだった。
「っ…ハッ…ぁ…」
小さく喘ぐ鈴のような声。体を覆うような、冷たくも柔らかな質感の鉱物。排気ガスのような匂いと、無花果の香り。
「…よかった、生きてる」
光が差し込んで、彼女の顔を見る。大の男を2人まとめて抱きしめられるほど彼女は大きかったのかと、青ざめるベジータの横で悟空は場違いにも感心した。
彼女の瞳がちかちかと点滅して、目と鼻と口からどぽっと黒い液体が流れると、彼女は地面に伏せる。
削げた背中からエネルギー液が広がっていく。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 29人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
メルト(プロフ) - どでぃさん» ありがとうございます！本当はスパヒ始まる頃に終わらせておくつもりでした！無理でした！ (2022年7月28日 22時) (
レス) id: 465e22fbd6 (このIDを非表示/違反報告)
どでぃ - 面白いです！すっごい続き気になってます、更新頑張ってください。 (2022年7月28日 11時) (レス) @page49 id: 8e1c6e0d2a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：メルト | 作成日時：2022年5月3日 0時
