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「くそ、足をやられた。もう遠くへは行けん」
「蛇、蛇！」
「…せめてお前だけでもあの悪魔から遠ざけねば」
「何を」
「俺はもうじき死ぬ。お前だけでも、あの鐘から遠い場所に逃げてくれ」
「無理だよ。そんなのできない、できないから無理」
「案ずるな。俺はお前と共に過ごせた短くも華やかな日々さえあればいい」
「できない！できない！」
「きっとお前は、お前を大切にしてくれる者に出会う。罪すら罪と思わぬ、神が拒んだ人間の根源よ。お前は善悪の実。全てを知る者」
「何も知らないもん、何もわかんないもん。一緒にいてよ。ねえ」
「俺のような、知っているだけの者になるな。お前の知は全ての物事に通ずる諸行無常。俺にも終わりをもたらしてくれた」
「やだ、やだ、終わらないで、死なないで！」
「初めの時もこうだったな」
ああ、あなたも愛された。
そう、私は愛したけれど、あなたは愛されたんですの。
愛とは無限。エデンのよう。私は愛に死ねた幸福を一身に、今もこの世を彷徨っていますの。
黒い宇宙はなんと恐ろしい事でしょう。
殺し合う人間たちの愚かなこと。
お父様は愛されたくてあなたをお創りになったのね、なんて失礼な。私があれほど命には敬意を払えと言ったのに！
ええ、命とは、例え神が作ったとしても神のものではありませんわ。与えられたことこそ幸せで、その後のことは関係ありませんもの。死んで地獄か極楽かなんて、神に決める権利はありませんわ。
お父様はあなたの中に私を押し込むおつもりなのね。
大丈夫よ、私はあなたの体に入りたくなんてありませんもの。私には似合いませんわ。その宇宙の匂いが染みついた躯なんて、蛇の涎の味がする抜け殻なんて。
ええ、ええ、違いますわ。決して馬鹿にしているんじゃなくってよ。ただ私、神という存在が嫌いなんですの。例えそれがお父様だとしても、命を好きにしていい理由にはなりませんわ。
愛ですわ。愛を吸って生きる命は、神の手から離れているのですわ。
あなたの中に満たされている愛は、私のものにはなりませんわ。
「あら、起きた？分かる？」
わたしは、知っている。
この世のすべての事象を、その名を、その運命を知っている。
わたしは、知らない。
善悪が何か、知恵とは何か、愛とは何か。
わた、しは、知っている。
わ…たしは、知っている。
…た…は、知っている。
…。
空っぽでも、わたしは…。
あ
「おむらいす、食べるんだ、っけ」
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メルト(プロフ) - どでぃさん» ありがとうございます！本当はスパヒ始まる頃に終わらせておくつもりでした！無理でした！ (2022年7月28日 22時) (
レス) id: 465e22fbd6 (このIDを非表示/違反報告)
どでぃ - 面白いです！すっごい続き気になってます、更新頑張ってください。 (2022年7月28日 11時) (レス) @page49 id: 8e1c6e0d2a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：メルト | 作成日時：2022年5月3日 0時
