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痛みとはこれほどまでに体を支配するらしい。
父に打たれた釘は掌を突き破り、足の甲を貫いた。その釘もびくともせず、茨の冠の隙間から見える景色は完成された楽園。激しい嫌悪と絶望と、悲嘆に沈む。釘から零れる金色の液体が、十字架を伝って地面に流れ染み込んでいく様は、思い出そのものが死んでいくようだった。
終わりを恐れた父のための楽園には、父のために存在する命のほか何もない。自分もその一角なのだろう。蛇も、あそこの兎も、あそこの鳥も。この星に執着を持っていないことを父は随分怒っている。あの地球のために自分が帰ってきたことにも。
ガラーン…ガラーン…。
「ッ、ぐ、ぁぁぁぁ、ああああああ!」
脳が揺れる。体の形が変わるような不快感と、体の内側から肉がはじけてしまうような吐き気。頭痛。眩暈。これを人は激痛と言うのだろうか。痛みを感じない彼女は美しい髪を振り乱して激痛に吠えた。磔にされてから6度目の鐘にも、体は慣れようとしなかった。
鐘が鳴り止む頃に口の端から唾液を溢しながら、息を整えた。
「げっ、ぇ…」
びしゃっと口からあふれたのは唾液ではなく、例によって金色の液体だった。高エネルギー分子の黄金の吐瀉物に体を汚す。
父のための楽園を美しいと思えなかった。建前のように綺麗な場所だとは言ったが、Aとしては始まりと終わりのある惑星の方がずっとずっと魅力的だった。他の宇宙にはいる父とはあまりに遠い神々や本物の天使たちを見て、父の無力さを思い知った。
所詮箱庭でお人形遊びをしているようなものだ。
何が創造主、何が全知全能。
知るべきところ知っていて何が神か。
蛇が教えてくれたのはこの世のあらゆる事象と可能性だった。未来があった。白い巨大な蛇の口から紡がれる言葉は友人としての言葉だった。

初めの時もこうだったな。
そう言って彼は頭だけのままになって私を口に入れ、エデンから落下した。
落ちた先に悟空がいたのは不幸中の幸いだったのだろう。
全ては私を逃がすために。

目の周りを蠢く茨の冠の隙間から見える神殿と呼ばれる近未来的な四角い箱の壁がばらばらと崩れ宙に浮いた。異様さを目の当たりにしながらその技術すら忌避の対象になる。
父がまた何かするのかもしれない。
何をされるのだろうか、鞭打ちか。
半ばあきらめながらその先を見た。見慣れたような黒い髪の二人がいた。
夢だと思った。夢なら覚めなくていい。
「ごく…べじーた…!」
2人に会えたのが嬉しくて涙が出た。
なんでか二人は驚愕し青い顔をして、父に殴り掛かった。

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メルト(プロフ) - どでぃさん» ありがとうございます!本当はスパヒ始まる頃に終わらせておくつもりでした!無理でした! (2022年7月28日 22時) (レス) id: 465e22fbd6 (このIDを非表示/違反報告)
どでぃ - 面白いです!すっごい続き気になってます、更新頑張ってください。 (2022年7月28日 11時) (レス) @page49 id: 8e1c6e0d2a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:メルト | 作成日時:2022年5月3日 0時

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