34 ページ35
「エデンは、あらゆる宇宙の賢者たちが、この世に絶望し、作り上げた真の楽園です。そこに招かれたあなた方は幸いだ」
淡々とする天使たちは皆同じ顔だった。
彼らもまたAと同じく人ではない。
真っ白な神殿に案内され、そこは高い天井に青のステンドグラス、黄色の星空が描かれていた。
「お前らの父とはなんだ」
「父は創造主で御座います」
「…会話にならんとはとんだポンコツだ」
ベジータの悪態にも天使は物怖じしなかった。怖気付くことなどないのだろうが。
案内された先には白く長い食卓と、その上に並ぶ白い皿、開放的に窓は付いておらず、美しい花が咲き乱れる庭がよく見えた。春風のような心地良い穏やかな気候が流れ込んでくる。
しかしそれより先に目を止めたのは、長い食卓の向こう、天井にまで届く白い巨塔のような筒。7人の男と女が埋め込まれたように顔だけでており、青白いランプが灯ってある。
よくぞ来られた、サイヤ人よ。
脳内に響くような不気味な複合音声に、悟空は咄嗟に耳を覆った。聞き覚えのある音ではあった。
ランプが黄色に光り、一筋の線が空中に人型を作る。その人形は彼女と同じく背が高くて、黒曜石のような黒い肌に琥珀色の髪をしていた。髭を蓄えた精悍な顔つきをしており、初老の男性はどこかベジータ三世に似ている。
「…おめぇが、Aのとーちゃんか」
「如何にも、私は愛しい我が子の父親、名はドミヌス。しかし彼女の名はインマヌエル。Aというのは忌々しい蛇が名付けた呪いの言葉だ」
悟空が身構えた。どうも食事をしようという空気ではない。眼前の人形は一つ息を吐いて、吐いた素振りを見せて、テーブルは2人を促した。
「立ち話もなんでしょう。積もる話もありましょう。さあ、食卓へ、さあ食事を」
ドミヌスが一つ言葉を発すれば白い皿の上には焼きたてのラム肉や、採れたてのフルーツがずらりと並んだ。あまりの匂いに空腹もそそられるが、ここで飛びつくほど2人は愚かではない。
かつてサイヤ人と他の異星人の戦で兵糧攻めがあったくらいには、サイヤ人には食べ物というのはとても魅力的なものなのだがとても不気味で、しかし美味しそうで、それでも食べる気にはならなかった。
ドミヌスは少し苦そうに笑った。
「ならば食べずとも席についてください。客人を立ちっぱなしにさせるなど、エデンの主人がして良いことではありません」
やはり声は複合音声で、女性的であり男性の声。その耳障りな音の波はジリジリと悟空とベジータの焦燥を煽った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 29人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
メルト(プロフ) - どでぃさん» ありがとうございます！本当はスパヒ始まる頃に終わらせておくつもりでした！無理でした！ (2022年7月28日 22時) (
レス) id: 465e22fbd6 (このIDを非表示/違反報告)
どでぃ - 面白いです！すっごい続き気になってます、更新頑張ってください。 (2022年7月28日 11時) (レス) @page49 id: 8e1c6e0d2a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：メルト | 作成日時：2022年5月3日 0時
