検索窓
今日:53 hit、昨日:25 hit、合計:15,352 hit

25 ページ25

驚異的な反射神経、重すぎる一撃。
鞭を振るうとエネルギーが凝縮され、先端に行き着く頃には振った腕の何倍もの力を放つ。彼女の技はそれに近い。
近距離で攻防しても全て受け流される。中距離の戦闘は彼女のスピード勝ちで、遠距離になればあの稲妻が飛んでくる。
ベジータはだんだんイライラし始めた。彼女に当てられた一発は最初の蹴りだけで、あとは見透かしたように躱される。
いや、彼女自身が成長しているのだ。
ベジータと、悟空と、あの正体不明の天使たちと、少しばかりの戦闘で覚えてしまったのだろう。
Aの回し蹴りを受け止め、弾く。隙を狙って拳を繰り出すが、彼女は弾かれたその勢いでまた回って反対側から蹴りを入れる。ベジータはヤシの木に体をぶつけた。
利き手も無い、体幹と重心が一切ぶれない。戦闘相手としてやりにくいことこの上ない。
凪を相手に拳を打っているようなものだ。
水面に立つAは、息を沈めた獣のように、ベジータが起きるのを待っていた。カモメが一羽、彼女の頭に止まる。
「ギャリック砲!!」
「っ」
逃げ遅れたAはそれを手で受け、上に弾き飛ばした。水面を滑るように転がっていく。
当たった!
追い打ちをかけるようにベジータは地面を蹴った。
「でやぁあッ!!」
Aは起き上がる。左腕にはカモメがいた。避けきれず羽が焦げてしまった。彼女はベジータを睨んで、その拳に対して拳をぶつけた。躱していた彼女が、躱さなかった。
ありったけの力だったかもしれない、だが彼女は、今までほんの本気も出していなかった。
鍛え抜かれたサイヤ人の身体は鋼以上に丈夫で、特に悟空とベジータは伸び代はあれどもう極限に近かった。神の領域とはそういうことだと。
ぶつかり合った力は、Aの力に飲み込まれていった。
「ぎゃあ、あああ!?」
拳、腕、上腕、肩。ベジータに走った激痛は、何年かぶりの粉砕骨折のそれだった。
「危ないよ」
焦げた翼は、飛ぶ分には問題ないらしく、カモメはワタワタと慌てて逃げ出していった。それを見送って、Aは、さぁ、とベジータに笑いかけた。しかし彼は浮いたまま、Aを睨みつけて歯を食いしばっている。
様子がおかしい。
Aは少し困った顔でベジータの返事を待っていたが、彼のだらんとした右腕を見て、あっ、と何かに気づいた。
「…痛い?」
「…クソッタレ、めちゃくちゃにな」
「ごめんなさい」
高い図体で小さくなってるAがおかしくて、ベジータは「バカめ」と言いながら左手で彼女の頭を乱暴に押し潰した。

26→←24



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (15 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
29人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

メルト(プロフ) - どでぃさん» ありがとうございます!本当はスパヒ始まる頃に終わらせておくつもりでした!無理でした! (2022年7月28日 22時) (レス) id: 465e22fbd6 (このIDを非表示/違反報告)
どでぃ - 面白いです!すっごい続き気になってます、更新頑張ってください。 (2022年7月28日 11時) (レス) @page49 id: 8e1c6e0d2a (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:メルト | 作成日時:2022年5月3日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。