秘密 yoichiro ページ41
.
何度も、何度も、何度も唇を重ねるけれど、足りない。
私の気持ちはまだ全然伝えきれてない…きっと、曜一朗だって…
曜「A、」
「ん、」
曜「A…」
「…曜…」
曜「お願いやから、泣かんといて…」
私の瞳から溢れる涙は曜一朗への想いを示すものなのか、それともこんなにも愛する人と結ばれることのない運命を嘆くものなのか。
きっと、両方だ。
止まらない涙に「どうして」と口にしそうになる。
どうしてもっと早く出逢えなかったのだろう。
どうして私たちだけこんな思いをしなければならないのだろう。
どうして彼を愛してしまったのだろう…
だけど、運命を責めようと思うとキリがないから。
それを嘆く言葉を口にしない。ふたりでそう決めた。
私の頬を伝う涙を一粒一粒拭いながら、優しく微笑む曜一朗。
その微笑みを浮かべるまでに、どれほど傷ついているのだろうか。そう考えてしまう私の心にも、またひとつ傷が増える。
私といると彼を傷つけてしまう。
私がいなくなっても彼を傷つけてしまう。
もう、出逢ったことが過ちだったとしか思えない。
曜「A、何も考えんと…俺だけ見といてや」
好きという言葉は生ぬるいと、初めて思った。
それで表現できるような想いなら、お互いを傷つけてまで強行しているこんな関係もなかったはず。
どれほどの人を傷つけ、どれほどの人を敵に回しているのか。
よくわかっているけれど…
何億もの人の中で彼と巡り合った奇跡を、手放すことはできなかった。
曜一朗は丁寧に私のブラウスのボタンを外すと、露わになった左胸にキスを落とした。チクンとしたと思うと、そこには小さな紅い印がひとつ。
曜「Aの、ここだけは…俺のもんやんな…?」
曜一朗の大人っぽい表情に、印をつけられた左胸が鼓動する。
この先、彼以上の人に出逢うことはあるのだろうか。
他人事のようにぼんやりそう考えながら、目の前の彼の首に腕を回す。
いつまでもこうしていられないことは百も承知。
だけどその日までは、このままで…
私たち以外誰も知らない、甘い秘密を抱えたままで、いさせてください。
y.k
続く お気に入り登録で更新チェックしよう!
最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している
←受験 gaku
145人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
るな - 拓実のをもっとみたいです! (2016年5月26日 20時) (レス) id: 04a05044af (このIDを非表示/違反報告)
るあ - はじめまして!とてもいい作品ばかりで全て見させていただきました!リクエストしたいのですが、健勇との子供ができて、一緒に遊んでいる作品がみたいです! (2014年8月4日 17時) (レス) id: 38f9bbd6a6 (このIDを非表示/違反報告)
柿柴 - 柴崎さんありがとうございます!わたしも高校受験なので主人公の気持ちがわかります!これからも柴崎さんをお願いします♪ (2013年11月7日 21時) (レス) id: d4c4f4e72c (このIDを非表示/違反報告)
miu(プロフ) - shinhoさん» リクエストをいただいてからお待たせしてしまって申し訳ありませんでした!とても嬉しいご感想をありがとうございます^^♪ (2013年11月5日 17時) (レス) id: 6afe004be3 (このIDを非表示/違反報告)
miu(プロフ) - なこさん» 川島さんは初めて書いたこともあって一話でおさまらないほどの渾身の作品となりました^^楽しんでいただけて何よりです。ありがとうございます! (2013年11月5日 17時) (レス) id: 6afe004be3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:miu | 作成日時:2013年8月30日 14時