貴方 takahiro ページ4
良かった、間に合った。
用事を済ませてから急いで滑り込んだスタジアム、試合はまだ選手入場をする前だった。
白いワンピースにヒールのあるサンダルと、サッカーを観にくる格好じゃないし、こんなところに若い女の子ひとりで明らかにこの場に馴染んでいない私。
だけど、そんなことはどうでもよくて。
一列に並んで入場してくる選手の中から、彼を探す。
誇り高きユニフォームを身に纏ったタカの表情は凛々しい。
ポジションにつく後姿を眺めながら、やっぱりタカが一番カッコイイな。だなんて思ってしまう。
試合が始まってもその表情は変わらず、真剣そのもの。普段とのギャップに目が離せなくなる。
惜しいシーンがあるたびにどよめく観客席。私の胸が高鳴るタイミングとはズレが生じる。
それは、ボールの行方よりも、彼がどこにいて、どんなことを考えて、どんなプレーをしているのか。そんなことを考えながら、彼の一つ一つのプレーを見ているからだ。
前半終了の笛が鳴って初めて、ガチガチに力の入った自分に気がつく。
ただでさえ浮いている私、喜びも悔しがりもしなければ更に周囲との温度差が激しかったことだろう。
しばらくして現れる、ピッチに戻る後姿。
私には想像もつかない責任感を負って、タカはそこにいるのだろう。
また一つ好きという気持ちが大きくなる。
十分がんばっていることは知っているけれど、円陣を組む彼を見つめながら心の中でがんばれ、とつぶやく。
後半もやっぱり、私の表情を変えるのは彼だけで。
もともとサッカーを観ることは好きだったけれど、タカが出場している試合に限ってはあまり試合内容を把握していない。タカがどんなプレーをしていたかだけは、脳裏に焼き付いているけれど。
試合終了の笛が鳴ると同時に、席を立つ。
やっぱりひとりでここにいるのはなんとも耐えがたい。もっと、”サッカー選手”としての彼の姿を見ていたいとも思うけれど、やっぱりすこし恥ずかしい。
家路につきながら、タカに会いたい。という気持ちになる。
ピッチに立つ彼は私の知らない人のようで。
とてつもなく遠い人のように感じてしまう。
あとで電話でもしてみよう、とその場では自分を落ち着かせる。
「もしもし、私。試合お疲れ様」
貴宏「観てた？」
「観てたよ」
貴宏「どやった、俺」
「かっこよかったよ」
とくに内容もない電話だけど、私の知っているタカだ。と、胸がすとんと落ち着く瞬間。
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るな - 拓実のをもっとみたいです！ (2016年5月26日 20時) (
レス) id: 04a05044af (このIDを非表示/違反報告)
るあ - はじめまして！とてもいい作品ばかりで全て見させていただきました！リクエストしたいのですが、健勇との子供ができて、一緒に遊んでいる作品がみたいです！ (2014年8月4日 17時) (レス) id: 38f9bbd6a6 (このIDを非表示/違反報告)
柿柴 - 柴崎さんありがとうございます！わたしも高校受験なので主人公の気持ちがわかります！これからも柴崎さんをお願いします♪ (2013年11月7日 21時) (レス) id: d4c4f4e72c (このIDを非表示/違反報告)
miu(プロフ) - shinhoさん» リクエストをいただいてからお待たせしてしまって申し訳ありませんでした！とても嬉しいご感想をありがとうございます＾＾♪ (2013年11月5日 17時) (レス) id: 6afe004be3 (このIDを非表示/違反報告)
miu(プロフ) - なこさん» 川島さんは初めて書いたこともあって一話でおさまらないほどの渾身の作品となりました＾＾楽しんでいただけて何よりです。ありがとうございます！ (2013年11月5日 17時) (レス) id: 6afe004be3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：miu | 作成日時：2013年8月30日 14時
