イスカリオテのユダ (ページ10)

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私のもとにはあの後採用通知が来て、ルーカスの外銀には
劣るけれど、大手総合商社から内定をもらった。

ぼーっと生きていたら確実に入れない会社である。
母や親戚は、私の内定を自分のことのように喜んだ。

それから私は消化試合のような大学の授業をこなし、
それっぽい卒論を書いて大学を卒業した。

そして私は今日、この家を出る。

父親とはきっともうほとんど会わなくなるだろうし、
母親と会う回数も格段に減るだろう。

母のことは大好きだったけれど、
それより父との暮らしをやめられることが嬉しかった。

最近は会堂にもほとんど足を運んでいなかったし、
今度こそは宗教とは関係のない生活をできると思っていた。

同期より2年遅く始まった社会人生活は、大変だった。

大学に6年もいた私は、「頑張る」ということに対して、
ものすごく鈍っていた。
覚悟はしていても、周りのレベルがものすごく高かった。

インターンで周りの学歴に驚いたのとは比べ物にもならない。
学歴だけは誉められてきたのに、同期では私が最底辺だった。

その中でもがいてもがいて1年が経った頃。

激務で疲れ切った私に、
同じく激務で疲れ切ったルーカスから連絡が来た。

“ お久しぶりです ”
“ 最近全然教会に来られていませんけど、大丈夫ですか？”
“ よかったら今度会いたいです “

外銀の大変さは、友達が外銀に行ったから知っている。

あの激務の中で信仰を保ち続けていられるのがすごいと思った。
私なら日曜日に教会に行く気にもならない。

［お久しぶりです。ぜひ会いましょう］
［日程はルーカスさんに合わせますので、
　都合の良い日を教えてください］

［ 20日か22日の夜はどうですか？
　19時以降なら空いていると思います］

［じゃあ20日の夜にしましょう。
　19時半には退勤できると思います。
　待ち合わせはどこにしますか？］

待ち合わせ場所と行きたいご飯屋さんを話し合って、
ルーカスとのディナーの約束が成立した。

普段は勤務中のクライアントとの連絡で精一杯で、
家に帰ってまで人と話したいとも思わないのに、
ルーカスと話しているのは楽しかった。

4月20日。ちょうど1週間後。

楽しみです、と返事をして、
そのまま携帯を枕元の充電器に挿した。

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