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今は人が多いし、あとで場所を移して話すことになった。
私の家とルーカスの家、どちらからも離れた駅前のカフェに18時。
5分前に着くと、彼はもう外で待っていた。
「それ、で……ご相談というか、お悩みというか……」
「そうですね、話します」
「僕じゃ良いアドバイスはできないと思いますけど……」
「いいんです。聞いてくれるだけで、いいんです」
だって、自分の問題は自分のものだもの。
ネガティブのお裾分けをしたくなくて、
ずっとできなかった話を、私は今日初めて他の人に話す。
アイスのキャラメルラテを飲みながら、話を切り出した。
「私……2年間イタリアに留学に行っていたんですけど」
「はい。存じ上げております」
「そんなに堅苦しい敬語じゃなくていいですよ。
……それで、2年間、あまり周りの人と連絡を取っていなくて」
「はい」
「日本に帰ってきたら、2年前と全く違ったんです。
周りの様子も、私の立場も。これから私はインマヌエルの
子として教会と皆様を率いていこうとは思っていますが、
まだちゃんと受け止めきれていないんです」
ゆっくり話すと相手に腹の内を探られそうで、
急ぎ目に、それでも言葉を選んで話した。
ずっとキャラメルラテのグラスを見つめていたせいで、
ルーカスの反応は分からなかった。
ただ、話し終わって数秒経って顔を上げると、
彼は優しそうに私を見ていた。
「……僕なんかに話してくださってありがとうございます。
僕たちはA様を急かすようなことはしません。
僕はA様と一緒に成長したいです。
もしA様が最後人間の道を選ばれたとしても……
それでも、愛してます」
「ありがとうございます」
「A様のことはずっと、きっと一生、好きです」
「私も、ルーカスさんが何をしても、どこにいても、
愛しています。一緒に成長していきましょうね」
彼と話している時だけは、逃げたいとは思わなかった。
ただの敬虔な信者の1人だけれど、
彼が私の精神薬で特別な存在であることは間違いなかった。
私の中にルーカスという逃げ道を見出せたことが、嬉しかった。
「愛してます。この世の誰よりも、自分よりも、
人生のすべての瞬間をかけて、愛してます」
私には勿体無い言葉だった。
信仰心から来るその言葉が、私のやさぐれた心に沁みた。
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作者名：johnana | 作成日時：2022年2月14日 0時
