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私の周りに、私が頼れる人はいなかった。
信者はひたすら私を神の子だ女神だと崇めてくるし、
母にも迷惑をかけたくなくて言い出せなかった。
父は論外である。
同期の友達も、社会人1年目でみんな忙しそうだった。
「……大丈夫ですか？」
「え？」
「失礼な質問をしてしまい申し訳ありませんでした。
今日、少しA様の顔色が悪く見えて……」
「あ、はい。大丈夫ですよ」
嘘。大丈夫じゃない。気付いて。私もう限界なんだよ。
せっかくの助けてもらうチャンスも、「大丈夫」の一言で
毎回蔑ろにするのに、常に誰か私をここから連れ出して
ほしいと思っていた。
今、私の目の前に立つルーカスにも、
同じことが当てはまる。
「ルーカスさん」
「はい」
「改めて、内定おめでとうございます。
……それで、その……私の父がなんと言おうと、
ルーカスさんは外銀に入った方がいい。見えるんです。
外銀でこそルーカスさんは輝ける」
「本当ですか？」
「成功が保証されていますよ。
ルーカスさんは置かれた場所で誰よりも輝ける人だから。
このチャンスを無駄にしないでください」
「分かりました。御言葉を信じて、進んで参ります」
「……話は変わりますが、ルーカスさんは将来、
この教会や私たちと一緒に働きたいと思っていますか？」
「え、あ、なんて答えるのが正解かは分かりませんが、
もし機会があれば是非……といった感じです」
「分かりました。でも今がその時ではないことは確かです。
是非内定先の企業に進んでいただければ、と思います」
「ありがとうございます」
父がルーカスに何か匂わせる前に、こう言うしかなかった。
私にできるのはそれだけだった。
どうかハリボテの神のために自分の人生を棒に振らないで。
信者を見て哀れだと思ったことは何回もあったけれど、
ここまで本気で誰かを救いたいと思ったのは初めてだった。
「……やっぱり、今日は元気がないように見えます」
「本当ですか？」
「……はい。僕はあなたを愛していますし、
あなたを小さい時から見ていたからこそ分かります。
こんな僕でも、お話くらいは聞けると思うので……」
「……聞いて、くれますか？」
「っ、はい！」
ただの信者にすべてを曝け出すことはできない。
でもその返事で、私は確かに救われた。
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作者名：johnana | 作成日時：2022年2月14日 0時
