イスカリオテのユダ (ページ1)

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いつからだろう。

私が人間から神になったのは、
私が讃えられるようになったのは、

いつからだろう。

父は、新興宗教の教祖だった。

1990年代に成立して世間を震撼させたカルト宗教ほど、
規模が大きいわけでも、メディアに取り上げられていたわけでもない。

この家の第一子として産まれた私は、きっと産まれた時から次期教祖になることが決まっていたんだと思う。

ただ父も母も、それは言わなかった。

母は敬虔なキリスト教徒で、
私もよく日曜日には母に連れられて礼拝に行っていた。

私はどちらかと言うとキリスト教徒に近かったと思う。
父の教えは、家族だからこそ信じようとは思わなかった。

聡明で誠実な人間になれ、と親の愛を一心に受けて、
私は普通の私立中学と私立高校で学生生活を送った。

大学は、親の勧めで私立大学の神学部に行った。

少し他の人よりも宗教の関わりが多いとは言えども、
普通に働いて普通に生きられると思っていた。

就活もしたし、内定ももらった。
大学を卒業して、社会人を無事に始めることができた。

でも私は今こうやって、教祖をやっている。

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