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SS「ステージに上がったチェリは、その場所にそぐわないほど豪華な韓服を着せられていた。随分と痩せてはいたが、今と変わらず、とても綺麗だった…言葉も出ないほどに、目を奪われていたよ。
そして始まったんだ。命懸けのショーが」
「え…」
SS「そう…驚くだろう。これは現実なのか、頭が混乱して何一つ理解できなかった。チェリは今にも潰れそうな台の上にかかった一本の綱の上を命綱をすることもなく歩いて、さらにはその上で飛んだり回ったりするんだ。
いつ崩れ落ちるかわからないし、チェリもいつ落下するかわからない。本当に心臓が止まるかと思ったよ。
その後も目を覆いたくなるような演目が続いた…でも、チェリが命の危機に晒されるそのたびに、観客は喜ぶ。
チェリは劇団の花形だった。どれだけ死と隣り合わせの日々を過ごしてきたことか…
保護した時には身体中が傷だらけで…身体だけじゃない、心の傷だって…私たちには想像もし得ない世界で生きてきたんだ。お前にもわかるだろう」
「はい…」
SS「お前はチェリの身体能力を随分と羨ましがっていたね。どこでアクロバットやパルクールを習ったのかも、知りたがっていた。それが答えられなかったのは、このせいなんだ。
誰に習ったわけでもない。ただ生き延びるために、チェリが自ずと身につけたものだったんだよ」
「そんな……」
握った手はそのままにヌナの顔を見ると、勝手に涙が溢れ出てきた。
『チャナ…泣かないで……』
「っ…だって…そんな…俺、何も知らなくて…！」
『うん…ごめんね……ごめんね、』
謝らないで、と声をかけたいのに…言葉が出てこない。
「…っ、ヌナ」
『うん…？』
「聞いても、いい？」
『もちろん、』
「…ヌナは何でそんな所にいたの…？」
『物心ついた時にはあそこにいたの…ヌナはお掃除や…その…部屋に押し込められている人に食事を運んだりしていたの…そこにはヌナよりも小さい子ども達がいてね、こっそり逃がしていたことがバレてしまって、ショーに出されることになったの」
「そんな…」
『団長はヌナがすぐにダメになると思っていたみたい…でもね、この子達を外に出すまで、絶対に死ねないと思った。ショーで生き残るたびに…少しずつ自由と、食事が手に入るようになったの。
皆は救えなかったけれど…生きていればきっとここから出られるよって…皆に食事やお水を分けて、毎日演目をこなすことだけ考えてた…』
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作者名：さくらんぼ | 作成日時：2023年10月29日 19時
