いつかきっと ページ13
side.DN
宿舎までの帰り道。
小腹が空いたのでラーメンでも食べようかと思いコンビニに立ち寄った。
「(まず飲み物買おう…えっと…炭酸、炭酸……あ、)」
ずらりと並ぶ飲み物の陳列棚で目に止まったのはりんごのパックジュース。
異国から来たという、随分と幼い印象を受ける3つ年上のヌナはりんごが好きなようで。
ヒョン達も「Aはりんごが好きなんだねえ」と、好きな物を知れて嬉しいと喜んでいたけれど、そんな物いつだって食べられるのに、不思議だなあと思ったことを思い出す。
普段はぼんやりとしている事が多いヌナだけど、おやつにヒョンがりんごの皮を剥いてやると嬉しそうに足をパタパタとさせながら「りんご、りんご」と小さな声で呟いている様子は見ていて思わず頬が緩む。
「(買って帰ってあげよう、)」
ヌナの喜ぶ顔を見たかったのか、どうしてそう思ったのかは分からないけれど、りんごジュースとコーラを手に早足でコンビニを後にした。
目的のラーメンを食べることを忘れていたことに気づいたのは、宿舎に戻り玄関で靴を脱いでいる時だった。
ぐぅぅ、となる腹の虫に何か食べ物を入れなければ。と振り返るとそこには部屋から少しだけ顔を覗かせたヌナが立っていた。
『チャン、お、おかえり』
「…ッヌナ、た、ただいま！」
まだこの男臭くて散らかっている家の中にこんなにきれいな女の子がいることに慣れない。
急に名前を呼ばれると、ドキドキしてしまうのはどうしてなんだろう。
『チャン、おなか、すいた？ラーメンたべ、る？』
「えっ！た、たべる！！」
『ふふ、おてて、あらって。うがい、ね』
「っうん……！」
バタバタと急いで荷物を下ろして洗面所へ向かう。
なんとなくわかっていたことだけど、誰かが…ヌナが家で迎えてくれることって、こんなに幸せなことなんだ。
そう思うだけで、自然と口の端が上がってしまうのを止められない。
「いただきまーす！！！」
『あつい、きをつけて』
「うんっ、ありがと！」
『きょうも、れんしゅ？たいへんだった？』
「うん！！も〜めっちゃ疲れた！！練習はキツイし、ヒョン達は意地悪ばっかするし………あ！」
『ひぇ』
いけない。話をすることに夢中になって、ジュースの存在を忘れてしまっていた。
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作者名：さくらんぼ | 作成日時：2023年10月29日 19時
