謝らないで ページ12
side.WZ
食事を終えて食器を下げようとテーブルに背を向けた瞬間、ビシャ、と水がこぼれる音がした。
驚いて振り返ると、そこには食器を沢山抱え"やってしまった！"という顔で立ち尽くすミンギュと、びしょ濡れになって目をぱちくりとさせているAが椅子に座って固まっていた。
「あ〜あ〜…」
MG「っA…！ごめんっ」
『(ふるふる)』
「ミンギュ、いいからお前ここ片付けろ。A…は着替えだな。」
「ごめんなさい〜！」と半泣きになりながらガチャガチャと大きな音を立てて食器を片付けるミンギュに、今度は食器を割るんじゃないか…と心配になるが、Aが風邪をひいてはいけないと思い取り急ぎタオルを手渡して新しい服を手にリビングへと戻る。
「A、新しい服。髪は濡れてないね…着替えたら呼んで」
『…(こくり)』
頷くまでに若干時間がかかったような気もするが、後ろで「ああ〜っ」と焦った声を出し続けるミンギュが気になって仕方ない。
"ヤバい方"を天秤にかけ、ミンギュを選んだ俺はAをさっさと部屋へ押し込み、後ろ手で扉を閉めた。
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「こんなもんか…」
MG「ジフニヒョン、ありがとう！」
「分かったから」
MG「Aは着替えられたかな？」
「見てくるから、食器乾いた布で拭いといて」
MG「はい！！」
「…」
返事だけは一丁前なミンギュに若干の不安を覚えつつ、部屋の扉をノックする。
「A、着替えられた？」
『…』
「A…？開けるよ？」
返事が無いことを不思議に思いそっと扉を開けると、そこには今にも泣きそうな顔で服のボタンを一生懸命に閉めているAがいた。
「A、」
『！』
名前を呼ぶと弾かれたように顔を上げたA。
途端にしゅん、と落ち込んでバツが悪そうに俺の方へと歩いてくると一言『ごめんなさい』と謝った。
「どうして謝るの…」
『ジフン、よべなかっ、た…』
「！」
すっかり落ち込んでもじもじとボタンを触りながら俯くAの手を握って、2つも留められてすごいと思った事。呼べなかった事は決して悪い事ではないし、謝る事でもない事を伝えた。
「ボタン、手伝ってもいい？」
『い、いの？』
「うん、一緒に練習しよう」
『(にこにこ)』
やっぱり、Aは笑顔でなくちゃね。
もう絶対にあんな顔をさせるな、イ・ジフン。
今日の出来事を忘れないよう、強く胸に刻みこんだ。
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作者名：さくらんぼ | 作成日時：2023年10月29日 19時
