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SS「チャナ、"劇団"という言葉に聞き覚えはあるかな」
「あ、えっと…昔ニュースになっていた…？」
SS「そう…表向きは曲芸団と銘打っていたが、裏では薬の取引から人身売買まで、色々な犯罪を犯していた集団だった。チェリと初めて出会ったのは、その、"劇団"の中だったんだ」
「……っ」
SS「当時95〜97年生をつれて、所謂スラムと呼ばれている場所に練炭を届けるボランティアに参加したんだ。
ボランティア自体は特に問題もなく終わり、飯でも食べて帰ろうかと言う話をしていた時だ、男から「講演を見て行きませんか」と声をかけられた。
これは後で気づいたことだが、俺が子どもをたくさん連れているから、劇団の関係者だと思われたようでね。つまりは、商品だ。
お前達を立派なグループに育てたい一心で、何かヒントになるものを得られるかもしれないと思った俺は何の疑いもなくその男についていった。
少し歩くと、錆びれた大きな建物があった。驚くことに中に入ると沢山の人がいてね。煌びやかな電飾と赤い絨毯。壊れたジュークボックスからは歪な音楽が流れていた。
俺たちは1番前の席に案内されて、次の演目が始まるのを待った。
その時から違和感には気づいていたけれど、どこか抜け出せない、抜け出してはいけないような感覚に陥っていて…いや、ただ怖かっただけなのかもしれない。席を立つことはできなかった。
セットはボロボロで、今にも崩れそうな箇所がたくさんあった。空気も埃っぽくて…俺はとんでもないところに来てしまったのかもしれない。ただ子ども達は何としても守らないと。そう思っていたときだ、客席から、その会場が割れるんじゃないかと思うほど、それはそれは大きな歓声が聞こえて…そしてステージに現れたのはチェリだった。」
「………」
開いた口が塞がらなかった。頭では理解しているのに、俺の考えが追いついていないというか。
無言になる俺の手を、ヌナが優しく握ってくれる。
『チャナ…無理、しないで』
ああ、そんな顔をさせたいわけじゃない。無理だってしてないよ。ごめん、ごめんねヌナ。
「心配かけてごめん、ヌナ。無理なんてしてないよ、大丈夫」
『…うん、』
その手を握り返し何とか笑顔を作ってヌナを安心させようと努力はしてみたものの、うまくいった気配はなかった。
それでも。代表に向き直ってしっかりと目を見ると、続きを話し始めてくれた。
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作者名：さくらんぼ | 作成日時：2023年10月29日 19時
