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ごくん、どっちの唾を飲む音か分からないくらい静まり返った我が家の玄関。
「してない、です。」
「じゃあ中入ってもいいよね。」
お邪魔します、と靴を脱いでズカズカ入ってくるウォヌ。必死に引き留めようとちょろちょろ動く私の肩をガシッと掴んだと思ったら、手を回すよう、トントンと自分の首を叩く。
大人しく腕をかけて顔の距離が近づくと、顔良いな、という煩悩で溢れかえった頭を一掃するようなアクションが起こった。
「？！」
「なんだ、軽いな。ちゃんとご飯食べてたの？」
フワッと体が浮く感覚に驚いて落ちるのではないかと不安になるが、存外逞しい腕に支えられて密着する。
そ、それはこっちのセリフだよ、と噛み噛みになりながら言うと「舌噛むから、黙って。」と聞いてきたくせにピシャリと言うウォヌ。
この男に女をお姫様抱っこできる力があったとは思わなかった。ゲーマーって、もやしっぽいし。でも鍛えてるもんね…。
って、そうじゃない。あの部屋の惨状を見られたら色々終わってしまう、全力で引き止めなきゃ。ジタバタしても私が危険なだけで、すっかり腕の中な私に引き止める方法は言葉しかなかった。
「う、うぉぬ。私の部屋今Gいるから行かない方がいいと思うな！」
「…。」
私を抱えたままウォヌは私の部屋へ迷いのない足取りで進む。そう、この男はとてつもない頑固者であった。
*
「で、なにこれ。」
自室で正座になる私と、大量のジョシュアくんグッズを持っては眺めているウォヌ。奇妙な空間である。
「じょ、ジョシュアくんです。」
「はぁ………。」
私は怒られて失望される前につらつらとゲームにハマるまでの経緯を話した。
ウォヌは話を聞く度に険しい顔になり、最後は頭に手を当てて多くため息をついた。
ウォヌは自分の頭をぐしゃぐしゃと掻き回した後、私の前にしゃがんで、「ごめんね、寂しい思いさせてたんだな。もうしないよ。」と優しい声色で言ってキスをしてきた。しおらしい態度に驚き、
「気にしないで…。確かに最初はムカついたし悲しかったけど、私もゲームの良さが分かったよ！」
とフォローを入れた。
「それにしても、このジョシュアむかつく。うん、すごいむかつくんだけど。」
「え？」
「やっぱり俺たちの関係、見せつけないとね？」
ウォヌはもう一度私を抱えてベッドに降ろし、上に馬乗りになってにやりと笑った。
「さ、仲直りしようか。」
fin
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作者名：あった懐炉 | 作成日時：2024年2月11日 21時
