PUP 8 ページ8
ジョンハンはなんだかむず痒そうな顔をしながら小さくうん、だかおー、だか呟いて、スンチョルくんを小突きながら教室の奥へ行ってしまった。
「Aちゃん、そろそろ着替えないと時間やばいんじゃないかな？」
「わっ、ほんとだ。ジスくん本当にありがとう、後でしっかり奢らせていただきます。」
「あはは、楽しみにしてる。じゃあ先いくね！」
うん！ありがとー！と大きい声で言いながらブンブン手を振ると、ジスくんはそんな私を見て、本当に犬みたいで可愛い！と言いながら笑っていなくなった。
…気分は悪くない。
*
時は過ぎ、下校時間。スンチョルくんは気にしないでいいと言ってくれたが、洗濯して返すと頑なに譲らなかった私を見て苦笑しながら「じゃあお願いします！」と言ってくれた。新たな交友関係も出来てホクホクの私だが、ここに拗ねた面倒くさい人がいることが問題だ。
お地蔵さんのように動かないから、そろそろ置いてくよなんて仮にも犬とは思えない発言をして行こうとしたら、突然私の服の袖を引っ張って言った。
「……くさい」
「えっ？」
「A、スンチョリくさい！」
…なんじゃそりゃ。
ジャージを着ていたからだろうか。それにしても言い方ってものがある。
「くさくないけど、別に…」
なぜ機嫌を悪くしているのか、優しく聞くと
「………お前、おれの犬のくせに、他のやつの匂いつけるってどういうこと。」
と言ってそっぽを向いてしまった。…髪の隙間から見える耳が赤く染っているのは指摘しない方がいいよね。マーキング的な意味だったなら、くさいという表現はアレだが私が悪い…のだろうか。とまた直ぐに絆される。
「ごめんね、わたしはジョンハンのわんこだよ。」
「…ハニ」
「うん、ハニのわんこです。わんわーん」
ごしゅじん！と言いながらふざけてジョンハンの元に飛びつくと、ジョンハンの胸の中にギュッと閉じ込められて思わず体がびくっとなる。
華奢に見えて案外胸板がかたくて、今までに無い距離にどきどきする。彼にとって私は犬！わたしはいぬ！と何度も自分に言い聞かせる。ぐりぐりと私の方に頭を押し付けて
「うん…。おれの。」
すーはー、と私の首元の匂いを嗅いだジョンハンは、しばらく抱きしめると満足したのか私を解放して言い放った。
「今度から、おれのとこきて。ジャージ持って歩く。」
「ええ…もう忘れないよ〜…。」
*
(忠犬の極意 : ご主人様を時には頼る。甘えると尚良。)
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作者名：あった懐炉 | 作成日時：2024年2月10日 21時
