PUP 26 ページ26
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「寝てる間に言うとかダサいけどさ、朝はほんとごめん。」
なにがごめんかも分かってないくせに。
「あと、あの日勝手にキスしたのもごめん。」
後から謝るくらいなら、やらないで。
「忘れてほしい。」
忘れられるわけない。できるならとっくに…
かけられる優しい声にじわりじわり、心が溶かされるのを感じながらも、反対にどんどん冷めていく頭。
きっとジョンハンは後悔している。
犬として都合よく扱っていた私に飴を与えすぎてしまったことを。
勘違いして、看病なんてしに来てキスしたわたしを憐れに感じているに違いなかった。
こんな辛い思いをするのなら、もっと早くに抵抗すればよかった。幼馴染みで、犬とご主人様の関係なんておかしいに決まってる。
ずっと分かってたのに、ジョンハンの傍にいれるならいいやって思った。このポジションを譲らないでいたいと思った私の浅ましさのせいだ。
私がひねくれた思考に走り、思わず目頭が熱くなり始めたその時、小さな声が聞こえた。
「…やっぱなし。」
思いもよらない一言に、頭が"それって、どういうこと?"とエラーを起こしている。そして、また熱くなる。
「ねえ、起きてるんでしょ」
その言葉を聞いて、長時間堪えていた姿勢も限界に達したのか、素直にもぞ、と動いてしまった。
_私のバカーー!!
明らかに狸寝入りをしていたことがバレた今、鏡を見なくてもわかるくらい顔面蒼白に。
次にジョンハンが紡ぐ言葉が怖くて仕方ない。ギュッとシーツを握って沈黙に耐える。
静まり返った保健室に二人の呼吸音。
私の心臓が早鐘を打ってバクバクとうるさい。皮膚を通って、服を通って、シーツを通り越してジョンハンに聞こえてしまわないか。
そしてようやっと、ジョンハンが息を吸う音がやけに大きく響く。
「好きだよ。」
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作者名:あった懐炉 | 作成日時:2024年2月10日 21時